第204回国会 厚生労働委員会 第25号 (令和3年6月4日)

橋本委員

お答えをいたします。
今、二問の質問をいただきましたので、一つずつお答えをしてまいります。
まず、新たな仕組みが必要になる理由についてでございますけれども、中小事業主及びその事業に従事する者については、例えば中小企業の社長や一人親方は、従業員と同様の作業に従事することから、業務に際して従業員と同様に負傷することが少なくなく、負傷等の災害に対する補償のニーズは高いと認識をしております。
こうした中小企業の社長や一人親方の災害を補償する公的な制度として労災保険の特別加入制度がありますが、十分に利用されているとは言い難い状況にございます。
そのため、中小企業の社長や一人親方の災害補償の多様なニーズに応えるものとして、民間団体の共済事業が行われてきたものと承知をしております。
このような共済事業は、従来は個別に法律による規制を受けずに行うことができました。しかし、平成十七年の保険業法の改正によって、この共済事業が保険業として位置づけられることとなり、従来からこの共済事業を行っていた団体は、当分の間の暫定措置として共済事業を行うことができるという不安定な立場に置かれることとなっております。
また、平成十七年当時の事業と同じ範囲でしか行うことができず、新たな共済事業の開始や金融機関における窓口販売などが制限されているなど、ニーズに応えた商品提供を行いにくい状況にあると認識をしております。
本法案は、このような課題を解消するため、恒久的な制度として位置づけ、中小事業主及びその事業に従事する者が安定的な制度の下で補償を受けられるようにする、こういうものでございます。
また、中小事業主の範囲ということでございますけれども、委員の御質問にありましたとおり、本法律案の中小事業主の定義には、「常時使用する労働者の数が三百人以下である事業主」、「資本金の額又は出資の総額が三億円以下である事業主」、「労働者を使用しないで事業を行うことを常態とするもの」、いわゆるフリーランスの方々、その方々に加え、これらに準ずるものとして厚生労働省令で定めるものと掲げております。
この厚生労働省令で定めるものについては、ほかに中小事業主として加えるべきものがいる場合に機動的に対応できるようにするために規定を置いているというものでございまして、現時点で具体的に想定している者はございません。もっとも、将来的に省令が定められる場合であっても、前三号に準ずるものでなければならないことを法文上明確にしております。このことから、この文言の範囲内で適切に定められることを想定しております。
そのため、委員御懸念のような、一般的に考えられる事業主以外の者が定められるということは想定をしていないわけであります。
 

高井委員

重要なことが確認できました。
では、次にお聞きします。
中小事業主労災等共済事業法案における共済は、国が行う労災保険や民間の傷害保険などとどのような差異があるのか。
また、同法案では、労働災害等以外の災害に係る共済事業についても実施できることとなっていますが、あくまでも人的損害が対象であり、建物、車などの物的損害は対象ではないという理解でよろしいでしょうか。
 

橋本委員

お答えをいたします。
まず、本法律案における共済と労災保険の特別加入制度では、対象者、加入手続及び補償範囲において差異があると考えます。
具体的には、特別加入の対象者は、中小事業主の場合は業種により従業者数が五十から三百人以下に限られ、一人親方等の場合は加入できる事業が限定されております。しかし、本法律案の共済は、労働者の数、資本金等の要件を満たせば業種に関係なく加入でき、フリーランスなどの個人事業主も加入できるという差異がございます。
加えて、特別加入制度では、補償される災害の場面が業務等に限定されるのに対して、本法律案の共済では、業務等以外についても対象とすることが可能となっております。
一方、民間の傷害保険について、その全てと本法律案の共済事業との比較をすることは難しいと考えますが、本法律案の共済事業においては、民間の傷害保険とは別に、中小事業主及びその事業に従事する者のニーズに合った様々な商品が提供することが期待されます。
このように、本法律案における共済は特別加入や民間の傷害保険とは異なる制度であると言え、このような制度を認めることは、中小事業主及びその事業に従事する者にとって補償の選択の幅が広がるというメリットにつながると考えております。
それから、共済の範囲についてでございますけれども、委員御指摘のとおり、本法律案の共済団体は労働災害等以外の災害に係る共済事業を行うことができますが、この災害には「負傷、疾病、傷害又は死亡」と限定的に書いてありまして、人的損害のみが含まれることでありますので、そのように法文上明確に規定されております。
したがいまして、火災等による建物、車などの物的損害は対象となりません。
以上でございます。
 

高井委員

これも重要なことが確認できました。
最後に、我が会派で一番大きな疑問になった点ですが、これはなぜ金融庁ではなく厚生労働省が所管するんでしょうか。厚生労働省に、これらの認可や労災認定、新規参入等の管理は、これだけ忙しい厚生労働省、そして実績もやはり金融庁に比べればはるかに足りない厚労省に果たしてできるんでしょうか。
 

橋本委員

お答えをいたします。
本法律案は、中小事業主が行う事業に従事する者等の福祉の増進に資することを目的としておりまして、本法律案の共済事業は、労働災害等防止事業を行う一般社団法人、一般財団法人が行政庁の認可を受けて行うことができるものであります。
そして、現在でも、厚生労働省において、事業主の中小企業における労働災害等に係る共済事業を実施している団体については、保険業法附則に基づく認可特定保険業の監督等を実施している実態がございます。現に行っているわけであります。
したがいまして、提案者としては、このような実態も踏まえ、厚生労働省の所管とすることがふさわしい、このように判断したところであります。
厚生労働省におかれては、金融庁を始めとする関係省庁と協力をしながら、適切に監督していくことを強く期待するものでございます。
以上です。