自由民主党道州制推進本部 幹事・事務局次長
衆議院議員 橋本 岳
1.大まかな道州制のイメージ
- 明治以来変わっていない47都道府県を7~12程度に再編成する。
- 国政府から道州政府、基礎自治体に権限・財源等を移譲し、地方自治を強化する。
- これらにより、
- 中央集権の打破と地方主権の確立(補完性の原則による)
- 多極型の国土形成
- 二重行政の解消、広域化による行政の効率化
- さらには人心一新、地域のバラエティが豊かになる等の効果が期待される。
2.自民党における道州制検討の経緯
- 平成12年3月 党内有志で「道州制研究会」立ち上げ。4月「道州制を実現する会」設置。
- 平成12年11月 「道州制の実現に向けた提言」
- 平成14年 国家戦略本部国家ビジョン策定委員会で、議論され、「小泉政権公約2003」に盛り込まれる。
- 平成16年1月 「実現する会」を「自由民主党道州制推進議員連盟」として改組。
- 平成16年11月 党政務調査会の組織として「道州制調査会」設置(伊吹文明会長)。
- (平成17年9月 郵政選挙: これ以降、橋本も議論に参加)
- 平成17年10月 「道州制に関する第一次中間報告」 …議論の必要性は認めつつ、導入の是非には両論併記の慎重な内容。
- 平成17年11月 内閣府道州制特区推進室に「道州制特区推進法案」起案指示。政府と平行して、党北海道道州制検討小委員会にて議論
- (平成18年2月 第28次地方制度調査会 答申 「道州制導入は地方分権を加速させ、国家としての機能を強化し、国と地方を通じた『力強く効率的な政府』を実現するための有効な方策となる可能性を有している」)
- 平成18年9月 安倍内閣成立。 道州制担当大臣設置(佐田 玄一郎 大臣) 杉浦 正健 道州制調査会長就任。
- 平成18年12月 道州制特区推進法 成立・施行。北海道が道州制特区となる。
- 平成19年1月 調査会に5つの小委員会設置(委員長は当時)
1)道州制推進小委員会 (額賀 福志郎 委員長)
2)道州と国の役割分担小委員会(遠藤 武彦 委員長)
3)道州の組織・権限小委員会(大島 理森 委員長)
4)道州と基礎自治体小委員会(中川 義雄 委員長)
5)道州と税財政制度小委員会(大野 功統 委員長) - (平成19年1月 内閣府に道州制ビジョン懇談会設置)
- 平成19年6月 「道州制に関する第2次中間報告」 …資料参照
- (平成19年9月 福田内閣成立)
- 平成19年10月 総裁直属機関の「道州制推進本部」に格上げ。谷垣禎一本部長。
- 平成20年6月 「第3次中間報告書」を提出。
- 平成21年 道州制基本法制定委員会を設置。
3.第2次中間報告書の内容
(1)道州制の意義・目的
- 国の役割の特化、地域ごとの産業・文化・文明の発信
- 官僚主導統治を見直し、補完性の原則に基づく地方主権・地域主権の実現
- 二重行政解消、広域行政実現による国民負担軽減
(2)道州の区割り
- 地域としての自立性、地理的・歴史的・文化的条件、地域アイデンティティやシンボル等を勘案し、国民的議論により決定。
(3)道州と国との役割分担
- 役割分担の三つの原則を提示
- 国が政策および制度の基本または基準を定める場合であって、その実施主体は道州または基礎自治体
- 地方支分部局は廃止し、その機能は道州または基礎自治体に移管
- 国庫補助事業は、財源を付して道州または基礎自治体に移行
(4)道州の組織
- 直接公選による議会の設置。首長は直接公選(大統領制)または議員内閣制。
(5)道州制における基礎自治体
- 都道府県の仕事の大部分は基礎自治体に移管。小規模な自治体には工夫。
(6)道州制における税財政制度
- 財政的な自立と税財源格差という現状に対し、二段階での実現を提言
- 第一段階:自主財源の増強、国・地方間、道州間の財政調整、知的・社会インフラ整備
- 第二段階:国からの交付金廃止、税源移譲、新税創設、調整システム廃止
(7)残された検討課題
- 道州の区割りのあり方
- 道州の州都のあり方
- 道州制下における大都市制度、東京都のあり方
- 道州と国との役割分担
- 道州制下の基礎自治体の規模等
- 道州議会と自治立法のあり方
- 道州と国会のあり方
- 道州に対する国の関与のあり方
- 道州制下における中央省庁の体制のあり方
- 道州における公務員制度(官民の人材交流を含む)のあり方
- 道州と税財政制度のあり方
4.道州制に関する雑学と私見
※都道府県は柔軟だった!
五畿七道、六十六国二島(対馬・壱岐)は律令制時代に確立(除く北海道、沖縄)。廃藩置県により3府302県に(1871年(明治4年)7月)。同年11月、3府72県に。紆余曲折を経て1888年(明治22年)、香川県が43番目の県として誕生、ほぼ現在の姿に。その後、東京都制施行(1943年(昭和18年))、北海道の自治体化(1947年(昭和22年)、沖縄県復帰(1972年(昭和47年))で現在に至る。
※四国は四県じゃなかった!
讃岐国 | 阿波国 | 伊予国 | 土佐国 | ||
1871年11月 | 香川県 | 名東県 | 松山県 | 宇和島県 | 高知県 |
1873年2月 | 名東県 | 愛媛県 | |||
1876年8月 | 愛媛県 | 高知県 | |||
1880年3月 | 愛媛県 | 徳島県 | |||
1888年12月 | 香川県 |
(以上二点参考:『知らなかった! 驚いた! 日本全国「県境」の謎 』(浅井建爾 著、実業之日本社)
※合併の功罪 ~市町村合併について
- 倉敷市の例:1967年 (旧)倉敷市、玉島市、児島市の合併
- 地域アイデンティティは消えず(三商工会議所の並存、ジーンズの町、etc…)
- 中心部のみが栄えたか?→むしろ、新倉敷周辺や中庄等が現在活気あり。
※区割りは本質ではない!
あまり区割りの議論に立ち入ると、地方間の争いになる。本質は、国から具体的に何の事業をひっぱり、何の税源を持ってくるか。霞ヶ関の抵抗は激烈。
※地方発のプロセスを考えるべきでは?
自民党にしても、ビジョン懇にしても、地制調にしても、いずれも中央の議論。地方が道州制を作る!という気概と、具体的な仕組みが必要ではないか。たとえば…
- 全都道府県・全市町村で一部事務組合を設立する。
- 管理者を道州制担当相に任命する。
- 道州制担当相が他閣僚と折衝して、権限・税源等を確保する。
- 区割り・州都等は、基本的に組合の中において解決する。
- 地方発の道州制実現
※インセンティブを考えるべきでは?
- 都道府県の借金を、道州制導入時に国に肩代わりする((c)萩原誠司 衆議院議員)