衆議院議員 橋本がく

新たなIT戦略構築に向けての提言

 平成十七年十二月六日
自由民主党 政務調査会
u―Japan特命委員会
委員長 中 川 秀 直

総 論

 わが国は、二十一世紀における社会経済発展の基盤形成のため、これまで「世界最先端のIT国家」の実現を目標としてIT革命の推進に取り組んできた。この目標が現実のものとなりつつある今日、残された課題を確実に解決しつつ、今後は、従来のキャッチアップ型ではなく、世界を先導するとの考え方に立って、戦略を策定していく必要がある。

 そして、わが国が培ってきた、これからの新しい基盤であるユビキタスネットワークの優位性や得意とする関連技術を活かし、ITの構造改革力を飛躍的に高めることにより、わが国をはじめとして二十一世紀の世界が直面する様々な社会的課題を克服するとともに、その成功モデルを世界に発信し、フロントランナーとして世界のIT革命を先導するとともに、国際競争力を強化していく取り組みを強力に推進していくことが肝要である。

 また、利用者視点に立ったPDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)サイクルの遂行により、戦略のめざす成果目標の達成に必要な取り組みを計画的かつ強力に推進していくことが必要である。

 本特命委員会では、このような観点に立って、次のステップに向け、世界に先駆けてユビキタスネットワークへのパラダイムシフトを実現し、世界のIT革命を先導していくとの決意の下、名称をこれまでの「e―Japan重点計画特命委員会」から「u―Japan特命委員会」に改めるとともに、これまで審議・検討してきた結果を踏まえつつ、今後、わが国の新たな戦略において取り組むべき重要政策を、以下の通り、取りまとめた。

 政府においては、新たに策定する戦略において、この申し入れの基本的な考え方、及びその内容を確実に盛り込み、実現するよう、強く要望する。

各 論

 一 ITの構造改革力により、わが国社会経済が直面する諸課題を解決

(一)安心して暮らせる安全な社会の実現

① 総合的な防災情報共有プラットホームシステムの整備・活用や、防災行政無線・緊急通報網の高度化、携帯端末向け地上デジタル放送の活用などにより、地震などの災害に関する緊急防災情報などを迅速、確実に伝達できる基盤の構築、さらには火災・事故などの二次災害の原因となる機器類を制御する技術の実用化などを進め、災害に強い先進的な防災社会を実現すること。

② 交通事故の未然防止を目的とした先進的な安全運転支援システムや、交通事故発生時に携帯電話などを通じて、その発生場所の位置情報などを救急車両や医療機関が早期に共有できるシステムなどの開発・導入を進め、世界一安全な道路交通社会を実現すること。

③ 2010年度までに国内の主要な生鮮食品などの全てについて、電子タグなどを活用した生産流通履歴情報のトレーサビリティー・システムを導入し、国民がインターネットなどで確認できるようにするなど、先進的な食の安全・安心環境を実現すること。

④ 情報漏えい、サイバーテロ、ウィルス問題や、フィッシングなど増大・巧妙化する各種サイバー犯罪などの未然防止、撲滅に資する、先進的な情報セキュリティー関連技術やプライバシー保護・認証技術などの導入促進や情報セキュリティー・ポリシィーの徹底などにより、サイバー空間の安全性・信頼性の向上を図り、安心・安全なIT利用環境を実現すること。

 (二)活力ある少子高齢化社会の実現

① ITを活用することにより、高齢者・障害者・介護者や育児期の親などが、いつでも、どこでも、各々がおかれた状況に応じて就労したり、学んだり、社会参加し、活躍できる先進的な環境を整備すること。

② 福祉・介護・子育てなどを支える各種サービスの効果的・効率的な連携・利用とその質の向上を実現する情報システム基盤の構築とその利活用環境の整備を推進すること。

③ 高齢者・障害者など向けの生活支援ロボットシステムの開発や自律移動支援システムの実用化を推進すること。

(三)環境負荷を軽減する環境配慮型社会の実現

① ITによる先進的なエネルギー使用管理(BEMS、HEMS)、テレワークやITSなど交通流・物流の軽減・効率化に資するシステムの導入など、ITを活用した環境負荷軽減を推進すること。

② 電子マニフェスト及び電子タグなどを活用した、産業廃棄物のトレーサビリティー・システムの導入を促進することにより、不法投棄による環境汚染を未然に防止し、資源循環を促進すること。

 二 ITの力で公共分野の構造改革を推進し、良質で効率的なサービスを実現

(一)医療分野の改革の促進

① 相互に連関する医療・健康・介護・福祉分野のIT政策を総合的に推進するための体制整備及び基本方針の策定を来年度中に実施し、効果的な情報化を強力に推進すること。

② 医療保険に関わる全てのレセプトについて、分析可能な電子レセプトによる医療機関などから保険者までの一貫したオンライン請求を来年度より実施し、2011年度当初から、原則化すること。

その実現のため、本年度中に制度改正の実施及び工程表の明示を行うこと。医療保険事務の抜本的な効率化及び電子レセプトの有効活用を促進するため、診療報酬体系の徹底的な見直しを行うこと。蓄積された電子レセプトを有効活用した保険者機能の強化、公益に資する疫学的な研究の促進を図ること。

③ 医療の一層の質及び安全性の向上と医療連携及び業務の効率化を的確に推進するため、電子カルテ、オーダリングシステム(検査・処方などに係る情報伝達システム)、電子タグなどを活用した、医療機関の規模、機能などに応じた先進的な医療情報システムの構築を進め、2010年度までに診療情報の面的連携を図ること。

④ 国民が自らの健康増進に努めることを支援するため、国民が自らの健診結果、レセプト、カルテなどの健康情報を生涯にわたって、いつでも、どこでも、積極的に活用できる先進的な仕組みを、安心・安全に配意しつつ、確立すること。

 (二)利便性が高く、簡素で効率的な電子政府、電子自治体の実現

① 電子政府の実現により、国民が利便性やサービスの向上を真に実感し、オンライン利用率が向上する施策を集中的に実施すること。

 このため、オンライン利用に係る具体的目標設定を行ったうえで、添付書類など手続きの徹底的な見直し、処理期間、手数料や税をはじめとした各種インセンティブ措置の検討・導入、利用者視点に立ったシステムの見直しなどを実施すること。

② 電子政府の構築にあたっては、事前に費用対効果を十分に精査すること。このため、現在進められているレガシーシステムの見直しを含め、① 行財政改革に資する、② 適切な整備計画に基づく、③ 利便性の向上に寄与する、という3つの基準を満たすものについてのみ予算措置を行うこととすること。

 特に、旧式(レガシー)システム、省庁共通業務・システムの最適化については、PDCAサイクルを確立し、厳格な評価と不断の見直しを行う前提として、費用対効果と各情報システムの成果指標(KPI)、成果目標、達成期限などを明らかにするとともに、途中段階を含め達成状況を公表し、成果指標が達成できないものに関しては、システム開発の中止や廃止を含め抜本的に見直すこと。

③ 情報システムの企画・開発・運用が滞り、業務改革が頓挫することがないよう、情報システムに係る工程管理を、各省庁任せにせず、省庁横断的な着実な実施体制を確保することを目的として、IT戦略本部の下に、ガバメント・プログラム・マネジメント・オフィス(GPMO)機能を、2006年度早期に整備すること。

④ GPMOの機能の一環として、省庁共通業務・システムに関して、官民のリソースに配慮した機動的な資源配分と予算に関する調整、開発スケジュールの調整、各システム間でのデータ標準などの仕様調整を効率的かつ効果的に進め、また、予算の複数年度にわたる執行状況の管理を行うなど、着実に企画・開発・運用を行うこと。

⑤ IT戦略本部の下に、省庁横断的な「電子政府評価委員会」を整備し、各省庁の情報システム調達などの厳正な審査・評価を行い、業務見直しを含めた達成状況、成果を評価すること。さらに、各省庁においても、CIO補佐官を中心として情報システム調達などを統括する体制を整備すること。

 ⑥ ITに精通し、企画、契約、設計、開発、運用、廃棄に至る全プロセスをマネジメントでき、業務改革を推進できる体制(PMO)を担う人材を全政府的に育成するため、総合的な人材育成プログラムを策定すること。

⑦ 住民に身近なサービスを提供している地方公共団体における電子化を速やかに進めること。このため、電子申請システムを全都道府県で2008年度までに、全市町村で2010年度までに整備すること。また、転居や転出の際の窓口における各種行政手続の一括申請が実現するようシステム構築を進めること。

⑧ 地域住民が自ら主体的に地域社会づくりに参画する取り組みを促進するため、地方公共団体と地域住民が協働で運営する地域SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の整備をはじめITを活用したコミュニケーションの場づくりを積極的に支援すること。

 (三)教育分野のIT化と高度なIT人材の育成

① 学校内において、いつでも、どこでも、インターネットを効果的・効率的に教育や校務に活用できるよう、全ての普通教室から超高速インターネットに接続できる環境を計画的に整備するなど、積極的に学校内のIT基盤の高度化を行うこと。

② 教員がITを活用した授業の充実に割ける時間を確保するため、教員一人一台のパソコンを配備し、校務処理のIT化を進めること。

③ 教員の評価に情報活用能力を取り入れ、優秀な教員への優遇措置を設けるなど、教師が情報活用能力を向上させるインセンティブを設けること。

④ 各教科におけるITの活用を推進し、児童・生徒の学力及び情報を使いこなし、活用する力の向上を図るため、ITを活用した効果的な授業方法を確立するとともに、意欲のある児童・生徒がe―ラーニングなどITを活用して、さらに学力や情報活用能力を向上させることができる先進的な環境を構築すること。

⑤ 小中学校における情報モラル教育を充実させ、子どもの情報リテラシーを育むことにより、ITを的確に活用し、インターネット上の違法有害情報に起因する様々な問題に対応できる基盤を構築すること。

⑥ わが国産業全体の国際競争力に直結する高度IT人材不足、需給のミスマッチを解消すべく、産学官で連携して、求められている高度な知識と能力を持つIT人材を戦略的に育成するための機関を設立すること。

 三 ユビキタスネットワーク基盤の充実と国際戦略の推進

(一)ユビキタスネットワーク基盤の充実

① 光ファイバーなどブロードバンドネットワークの全国整備を推進し、2010年度までにブロードバンド・ゼロ地域を解消するとともに、2007年度末までにUWB、PLCなどの新たな電波利用システムの導入を図ること。
また、ブロードバンド無線アクセスの普及促進や、IPv6などを活用した
膨大な数の電子タグの同時利用を可能とするネットワークの実現を図ること。

② 高齢者・障害者・外国人を含む誰もが身体的制約、知識、言語の壁を超えて「便利」に生活できる情報アクセスなどのユニバーサルデザイン化を実現すること。

③ 最先端の情報セキュリティー対策を確保するうえで必要な研究開発などを推進し、その成果を導入するとともに、ネットワークインフラの機能やセキュリティー機能の高度化を可能とするIPv6への移行を進めることなどにより、最先端、かつ、安心・安全なユビキタスネットワーク利用環境の整備を促進すること。

 (二)わが国産業の国際競争力強化と国際貢献

① 先端的なIT技術やユビキタスネットワークを活用し、情報セキュリティーの面を含め、世界トップクラスのIT経営を確立することにより、わが国の産業競争力を飛躍的に強化すること。このため、企業経営へのITの戦略的な導入を促進するための措置を講じること。

 また、アジア発の国際標準をわが国が先導すること。

② わが国のコンテンツの創造・発信などの面についても、各種コンテンツのデジタルアーカイブ化やコンテンツ制作に携わる人材育成策の強化、さらには円滑な権利処理を可能とするための制度面を含めた基盤の整備などを進め、わが国の魅力「ソフトパワー」を発信すること。

③ 言語の壁を越えて、外国人にも便利に利活用できる、個人旅行にフィットした情報検索・予約システム、携帯端末などITを活用した観光地における案内システムや、各種観光・文化施設など解説情報システムの導入・充実により、地域の観光・経済の活性化とそのことを通じた、わが国の有する豊かな文化をはじめとする様々な魅力の世界への発信や国際相互理解の増進を強力に推進すること。

 ④ ユビキタスなネットワーク基盤を活用したトレーサビリティ・システムやユニバーサルデザイン化された社会インフラモデルなどを世界に発信することにより、二十一世紀における世界の課題解決に貢献すること。

 (三)研究開発の戦略的推進

① 様々な分野の基盤となり、また、国際競争力の強化に繋がるITに関する先端的な研究開発を戦略的・重点的に推進するため、中長期的な観点からの技術戦略を策定すること。

② いつでも、どこでも、誰でも、何でもネットワークにつながり、情報の自在なやりとりを行うことができる基盤の高度化を推進するため、ユビキタス端末やプライバシー保護技術などの研究開発を重点的に推進すること。

③ 研究評価制度の整備などにより、競争的な研究開発環境を構築し、創造的な技術開発を促進すること。

 むすび

 これからの新しい基盤であるユビキタスネットワークは、ユニバーサルデザイン化と相俟って、世界中のあらゆるパソコンをネットワークでつないだインターネットの登場を遥かに凌ぐ変革を社会経済や国民生活にもたらす力を有している。

政府においても、こうした点を踏まえ、世界に先駆けてわが国が先駆的に構築することとなる、これらを基盤とした新しい社会が、活力と創造性、利便性に富み、誰にも優しく、安心・安全で、快適なものとなり、世界の良き先例となるよう、さらにその社会像とその実現に必要な政策について検討を深めていくことを要望する。

以 上

参院選2016

自民党 第24回 参議院通常選挙

橋本がく応援歌

橋本がく事務所フェイスブックページ

橋本がくフェイスブック

橋本がくツイッター

お問い合わせはこちら

お問い合わせ
Copyright © 橋本がく All Rights Reserved.