橋本委員
自由民主党の橋本岳でございます。今回の児童福祉法改正両案に対する質疑というのは大変充実したものになっているな、大変勉強になったなというふうに思っております。感謝をしたいと思います。 その上で、私の方からも、二点ほどにちょっと注目をして質問したいと思っております。 まず、中核市の問題について。これも、いろいろな方からいろいろな御質疑がございました。私の方からは、中核市側の言い分についてちょっと掘り下げてみたいなと思っております。 お手元に資料をお配りしておりますので、ぜひごらんになりながら聞いていただければと思います。 まず、一枚目、中核市制度の概要等についての総務省の資料でございます。右側に変遷というものが書いてありますが、その一番下を御注目いただきたいと思います。 五年前、平成二十六年に地方自治法の改正がございまして、実は、中核市というのは要件が緩和をされて広がっております。泉市長が参考人質疑でおっしゃっていた、私が現職のときにもう義務づけしておけばよかった、こういう話がありましたが、そのときの中核市と今の中核市では少し定義が違っているというのは御留意いただかなきゃいけないんだと思うんです。 ちょっと一枚めくっていただきまして、二枚目、これは、私がたまたま、その地方自治法改正のときに本会議で質疑をしたときの議事録の抜粋でございます。当時、特例市というものがあって、それを、特例市から中核市へともう統合しようということだったわけですが、そのときに保健所の設置というのがハードルになる、実際にそういうふうに話を聞いたものだから、そういう質問を本会議でいたしました。 ですから、保健所ができて何で児童相談所ができないんだということもおっしゃっておったと思いますが、保健所をつくるのだって、新しく中核市になろうという市にとっては大変なハードルだったということは認識をしないといけないし、その上で、例えば藤田議員のお地元の寝屋川市はこの間、中核市になられたわけでありますが、そういう市にとってみると、保健所をつくるのを一生懸命頑張りました、えっ、今度は児相もつくらなきゃいけないのということで、もちろん、やればできる話かもしれないけれども、そこには一定のハードルがあるんだということはぜひ御認識はいただくべきなんだろうと思うわけであります。 続いて、三ページ目、四ページ目、これは、それぞれ中核市の尼崎市と倉敷市さんの資料をつけておりますけれども、児童相談所をつくらない、今のところつくることを考えていないからといって、別に児童虐待に対して手をこまねいているわけではないということでございまして、子ども家庭総合支援拠点、それぞれ名前はありますけれども、を中心に、県の児相とも連携をして、予防的なことから、あるいは妊産婦のときから子供、家庭への支援を行って、虐待につながらないようにずっとちゃんとやっているのだということでございます。これも御認識をいただきたいなということ。 それから、五ページ目、中核市市長会の資料でございますけれども、国からの補助がどうなのかということについて彼らで調査を行った。そのときに、例えば一時保護所の整備費と財源状況の調査結果、左下のところでありますけれども、本来、事業費の二分の一相当の補助というはずが、実態としては一割ぐらいしか達していませんよという話がある。あるいは、その右側、児童相談所(事務所部分)整備に係る交付税措置、含まれている自治体と含まれていない自治体とを比べてみた差が三百六十万円しかありません。それで児童相談所が運営できると思ったら、それは大分見当違いという話なのでありまして、実態に見合った算定方法等の見直しを要望、こういうことになっています。実態に合っていないということの指摘がある。国からの支援はどうだったのかということであります。 さらに、ちょっともう時間がないので駆け足でどんどん行きますけれども、六ページ目の中核市市長会のアンケートでありますが、いろいろな市がありますし、既に、財源の問題それから人の問題、いろいろな問題があるということは御指摘のとおりでありますけれども、やはり、支援と介入というものを分担するのがいいのか、それとも一体的にやることがいいのかということは、両論あったと思います。泉市長のおっしゃることもそうだなと思いながら聞きましたし、一方で、分担でいいのだという意見もある。高木委員と阿部委員の前回の議論でも、まだ議論があるというような状況だったというふうに理解をしておりますが、それはそれぞれに考えがあってやっておられるというところもぜひお気にとめていただきたいわけであります。 こうした状況がある中で、これは高橋委員がお触れになりましたが、一月二十三日に中核市市長会が厚生労働省に緊急要請というのをしております。それは七ページ目についておりますが、多くの中核市が未然防止等に取り組んでいるところであるということをお触れになった上で、「これまでの提言等に対して十分な対応はなされておらず、」とか、「当事者である中核市の実情や意見が反映されないなかで、」こういう結構厳しい言葉がこの要望には並べられて、厚生労働省に要望されているという実態があるわけでございます。 今回、二つの法案の中で、議員立法の方では、中核市、これは特別区もですが、児童相談所必置ということで規定をされておられますが、この規定の検討の過程でこの要望書というのはごらんになっていたのでしょうか、まずこれを伺いたいと思います。
阿部議員
橋本委員からの御質問、まことにありがとうございます。 まず、本法案において、私ども野党案ですが、中核市及び特別区に児童相談所の設置を義務づけましたのは、近年、児童虐待対応件数が急激に増加をいたしておりまして、一つ一つの児童相談所がカバーする人口が、例えば柏市の百三十万のように、大変大きくなっております。それに伴って、児童相談所において広域な自治体に対してきめ細やかな対応が困難になっていること、また、児童と家庭に対する相談についての基礎自治体の役割が強化される中で、基礎自治体と児童相談所との密接な連携のもとに、子育て支援から児童虐待への対応まで一貫した児童福祉政策を実施することが求められていると考えるためであります。 平成二十八年度の児童福祉法等改正法の附則第三条においても、施行後五年間を目途として、中核市及び特別区が児童相談所を設置することができるよう、その設置に係る支援その他の必要な措置を講ずるものとすると規定されており、中核市及び特別区への児童相談所の設置を進めるという大きな方向性が示されたと考えております。 一方で、今、橋本委員御指摘の中核市における児童相談所の設置に関する緊急要請、市長会から上がりましたものについては、「義務化ありきではなく、設置の後押しとなる十分な財政措置や専門的人材の育成・確保にかかる支援の充実によるものとするよう強く要請する。」という意見が示されており、私どもも拝見をいたしております。 中核市がこのような要請をされた背景には、平成二十八年度改正において設置に向けた支援が規定されたにもかかわらず、国による財政面や人材面での支援が不十分であるという現実があるのではないかと考えます。実際に、委員御指摘の緊急要請においては、これまで中核市、市町村が行ってきた財政措置や専門的人材の育成、確保に関する具体的な提言に対しても十分な検討、対応がされてこなかったという指摘もございます。 そのために、本法案では、緊急要請で示されたような御懸念を受けとめつつ、改正後の児童福祉法第五十九条の四第七項において、国による児童相談所の職員の人材育成やその確保のための支援、財政上の措置等の規定を設けております。 したがって、本法案は、決して中核市など当事者の意見を無視したものではなく、むしろ、その要請の本来の支援を深く理解して、この私どもの案にあっても支援の強化を求めるという点を強調しておるものでございます。
橋本委員
ごらんになったかどうかということをお尋ねした割には、随分丁寧な御答弁をいただきました。時間が限られておりますので、御協力をいただければ幸いであります。 そうはいっても、受けとめていらっしゃるということは理解をいたしましたので、ちょっと更問については、時間の関係もありますので、割愛をいたします。 ただ、よくこの委員会でも、何で関係者の意見を聞かないんですかという御議論というのはあるんだと思います。要望はごらんになったということですが、中核市市長会、それから念のために会長市の倉敷市のそれぞれ東京事務所に確認をしたところ、野党の方から特段ヒアリング等しておられないというふうに聞いています。 せっかくなので、やはり、特に、やるところの御意見を聞くことも大事なんですが、やることを考えていないとかできないと思っているところの御意見を聞くということも僕は大事なことなんだろうと思っていますので、それは我々みんなですけれども、そういう姿勢を持って臨みたいなというふうに思うところであります。 その上で、今、阿部委員から御答弁がありましたように、確かに、政府の措置というのは、資料でも触れましたが、どうだったのかということはやはりあるわけであって、これは政府の方にお尋ねをしますが、その平成二十八年改正で、支援等の必要な措置を講ずる、こう書いてあるけれども、実際、今、中核市って三つしかつくっていないよねという状況の中で、これは十分だと思っていらっしゃるんですか。
浜谷政府参考人
お答えいたします。 御指摘いただきましたように、まずは、平成二十八年児童福祉法の改正の附則におきましては、政府は、施行後五年をめどに、中核市、特別区が児童相談所を設置できるよう、必要な措置を講ずるとされております。 この規定を踏まえまして、これまで、人材確保、育成支援、市区の職員が県の児相の業務を学ぶ間の代替職員の配置等の人材面での支援、あるいは施設整備、児童相談所あるいは一時保護所の整備に係る支援等を行ってきたわけでございます。 しかしながら、今回の法改正に向けた議論におきまして、中核市からは、御指摘いただいたような指摘、また、国と中核市との間で丁寧な議論を積み重ねる、継続的かつ安定的な支援措置を講じるといったことを改めて御指摘いただいている、要望も寄せられているということにつきましては、結果として支援が不十分だったのではないかというような御指摘だと思いますので、これは重く受けとめたいというふうに考えております。
橋本委員
今後についても問うつもりでしたが、これは割愛をいたしますが、ぜひしっかりしていただきたい。 特に、大臣が、設置したい自治体には設置できるようにという形での方向性をお示しになっておられます。もちろんそれはいいことなんですが、今設置を考えていないとか、どうしようか迷っているみたいなところについても、きちんとコミュニケーションする中で、やはり、いいことであればぜひやりましょうねという方向性というものはぜひ厚生労働省の方からもお示しをいただけると前に進んでいくのかな。できれば、強制をしてやらせるというよりは納得をしてやってもらうというのが一番いいことだと思いますし、そのことの御努力はぜひ厚生労働省にもいただきたいなということは申し上げたいと思います。 もう一点、ちょっと残りわずかですが、触れたいと思いますが、実は、閣法の方では、都道府県は、児童相談所の行う業務の質の評価を行うことにより、その業務の質の向上に努めるものとするという規定が入っております。 議員立法の方ではこの規定というものは特段見当たらないんですが、このことについてどうお考えか、教えていただいていいですか。
岡本(充)議員
ただいま橋本議員御指摘のように、私どもの法案には、児童相談所の業務の評価を規定しておりません。 確かに、政府案では都道府県知事による児童相談所の業務の質の評価などの規定が存在していることは承知をしていますが、個々の児童福祉司が多数の事案を抱えている現状においては、児童相談所の業務の評価よりも先に、児童福祉司の負担の軽減や児童相談所の体制整備を行うべきという考えに立っております。 この考えから、本法案には、児童福祉司の段階的な増員や、児童福祉司一人当たりの相談件数が四十を超えないよう児童福祉司の配置基準の見直し、国による児童相談所の職員の人材育成やその確保のための支援、財政上の措置等を規定することにより、児童相談所の業務の評価ではなく、まずは児童相談所の体制の強化を図ることを主眼にする、こういう考えに立っております。
橋本委員
もちろん、体制の強化というのは大事だと思うんです。 ただ、忙しくてもう大変という状態だからこそ、一度落ちついて振り返るという意味での評価というものの機会をつくることが私は実は大事なんじゃないかと思っております。 政府の方は第三者評価ってちょっと言い過ぎな気がするんですけれども、もともとワーキンググループでの議事録ではそういうふうに出ておりましたが、実は、評価というのも、何のためにやるのかということがきちんと検討されてやられれば、それは業務改善のためにするということで、いいことであります。 特に、これは常々思っているんですが、児童相談所というところは、何か事件が起こると、あそこの児童相談所がどうだということで大変注目を集めるわけですが、いっぱいケースを抱えている、その中の多分大半は事件とかにならないで、例えば大学に進学するとか就職をするとか、そういう、支援の卒業というか何というかがあるんだと思います。そうしたことはほとんど報道もされないし、数字になって出てきたことも個人的には見たことがないんです。 でも、たくさんそういう例があるはずだし、児童相談所などの支援がうまくいったケースの数というものをちゃんとつかまえて、そういうことも含めてちゃんと評価を、全体像を見てあげる、あるいは自分たちで見直すというような機会として評価というものをつくっていただくのであれば、それは、忙しい中でもちょっと立ちどまって自分たちの業務を見直し、改善につなげていこう、あるいは、こういうことはちゃんとやっているということを外に対してプレゼンテーションする、そういう意味でも、評価というのはやる意味はあるんだろうと思います。 ただ、もちろん、業務多忙の折という中で、それにちゃんと配慮をした形での実施をしないといけないということもまた事実だし、そういう形でちょっと自分を振り返るための評価、それを第三者の方に検証していただくような形みたいなことが児童相談所にはふさわしいのかなと思いますけれども、単に、忙しいので負担をかけるという話ではないと思っています。そういう形の機会というのを今回政府案で設けられるということでありますから、今申し上げたようなこと。 あと一点、ちょっとくぎを刺すと、事件の数とか通告の件数とかを評価指標にしないでくださいねということは申し上げておきます。 それは、それが少ない方がいいみたいな形で評価をするということにすると、隠蔽とかそういうことにつながりかねないという面があります。もちろん数字として持っておくのは大事ですが、むしろ、どっちかというと、児童相談所がちゃんと発見をするということはすごく大事なことなので、ちゃんといっぱい受けとめるということはいいことだという評価をする。そして、それがきちんと支援につながり、それができれば事件とかにならないで、子供さんが大きくなるということをきちんと見てあげられるような評価につなげていただきたいなということを申し上げまして、質問を終わります。 ありがとうございました。