本村委員
そもそも、この手話通訳、要約筆記を担う方々の絶対数が少ないという問題がございます。 ワーキンググループの報告書の中では、電話リレーサービスの需要と費用の予測について試算がされておりますけれども、それによりますと、サービス開始の年から十年後、十一年目の年ですね、需要予測、利用者四万人から十二万人、中利用を想定して検討を進めることが適当というふうになっております。 この予測について、ワーキンググループの委員からは、四倍、十二倍と利用者がふえた場合を見据えて、相当速いピッチで通訳者を確保する必要があるというふうに指摘をされております。 しかし、現在、先ほど来質疑がございましたけれども、手話通訳士、手話通訳者の試験合格率はとても低く、ワーキンググループに参加をされた社会福祉法人聴力障害者情報文化センターの皆様方の二〇〇九年の手話通訳士実態調査によりますと、手話通訳士の合格率は九・八%、合格者の手話の学習年数は十三・一年というふうになっております。短期間に簡単になれるものではないということがよくわかるというふうに思います。 この電話リレーサービスのオペレーターの養成も当然進めなければならないわけですけれども、その担い手となっていただくことになる手話通訳をやっていただく方、要約筆記をやっていただく方々の絶対数をふやしていくことが必要だというふうに思います。電話リレーサービスを普及させていくためには、この手話通訳者、要約筆記者の人材確保、人材育成がどうしても必要になってくるというふうに思います。 現在、高齢化ですとか人材不足になっているところがふえております。どう対策をとるのかということが課題でございます。国が計画を持って養成する、人材育成を費用面でも協力して支援していくということが重要だというふうに思いますけれども、きょう、厚生労働副大臣、来ていただきました。よろしくお願いしたいと思います。
橋本副大臣
お答えをいたします。 電話リレーサービスを安定的に供給していくためには、そのオペレーターとなり得る通訳者、手話通訳士、手話通訳者及び要約筆記者の方々ですけれども、この養成を推進していくことは大変重要であるというのは委員御指摘のとおりだと考えております。 必要となるオペレーターの人数につきましては、現段階で正確に見込むことは困難ではございますが、日本財団が行っているモデルプロジェクトの現状を踏まえ、一定の仮定を置いて機械的に推計をしてみると、制度施行後五年程度で現在の従事者数の四倍程度必要と考えられ、これを充足するためには、毎年、常勤、非常勤合わせて約百人強、常勤換算で四十人程度の養成確保が必要と見込んでいるところでございます。 一方で、各資格試験の合格者数に関しては、手話通訳士試験は毎年百名前後、手話通訳者や要約筆記者の試験では毎年二百名から三百名前後となっておりまして、これらの合格者や既に合格している方々を中心にオペレーターを確保していく、このようになっておるところでございます。 厚生労働省では、通訳者の育成を推進するため、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業において、手話通訳者や要約筆記者を養成する地方自治体に対して財政支援を実施する、あるいは各地域で実施される養成研修における指導者の養成を関係団体に委託をするなどの取組を実施しているところでございまして、オペレーターの必要数を確保できるように、引き続き通訳者の養成に努めてまいりたいと考えております。
本村委員
今の電話リレーサービスの利用を前提にしますと、かからない、つながらないということもございまして、もっと養成をしていく、そして配置をしていくということが必要だというふうに思います。 ワーキンググループの委員の皆様方からは、手話通訳者、手話通訳士、要約筆記の仕事は、社会的責任が大きく、役割も非常に大きい、しかし、国や地方、行政から手話通訳事業に充てられる予算は非常に少額だというふうに指摘をされております。今後、オペレーターとして公的施設などに手話通訳者、手話通訳士を配置することは、職業的な地位の向上が期待できるという御意見がございます。 手話通訳、要約筆記を担う方々をふやすためにも、国が数値目標を持って、今から十分な予算をつけて養成するべきだ、今の額じゃなくて、もっとふやして。これまで日本財団さんが電話リレーをやっていたわけですけれども、そこに対する補助金もこの電話リレーサービスに生かすということも含めて、ぜひ予算の増額をお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
橋本副大臣
お答えをいたします。 電話リレーサービスのオペレーターとなります通訳者につきまして、必要となる人数を確保するためには、必要な予算を確保して、さまざまな事業を実施していくことが重要であると考えております。 このため、令和二年度予算においては、先ほど申し上げました地域生活支援事業による地域の通訳者養成を推進する取組や、団体に対する研修、指導者の養成の委託のほか、手話通訳者等の養成を更に推進するため、地域の需要や必要数を踏まえた通訳者の養成計画の作成、地域課題の把握、改善手法の検討等を実施する事業の創設、あるいは、若い方に手話通訳等の普及を図るべく、大学などで手話通訳者の養成研修をモデル的に実施する事業の拡充などに必要な予算を確保しているところでございます。 また、先ほどお触れになりましたが、現在、厚生労働省では、日本財団の電話リレーサービスモデルプロジェクトを実施している聴覚障害者情報提供施設に対して定額の補助を実施しているところでもございます。 現在の日本財団による電話リレーサービスモデルプロジェクトによる事業は令和二年度までの予定ではありますが、公共インフラによる整備が開始されるまでの間、日本財団によるモデルプロジェクトとのサービスに空白期間を設けないように、厚生労働省としては総務省や日本財団と調整することとしておりまして、本事業についても、その状況を踏まえ、必要な対応を検討していくこととしておりますし、また、更にその先を見通して予算を確保していくべき、こういうことでございますけれども、しっかりと予算が確保できるように私たちも頑張っていきたい、このように考えております。
本村委員
ありがとうございます。 通訳オペレーターの養成なんですけれども、現在、厚生労働省の方で、電話リレーサービスにおいて、オペレーターのカリキュラムをつくるために、群馬大学の中野聡子准教授に委託をして調査研究を行っているというふうに思います。 ちょっと時間がないので御答弁いただけないんですけれども、実際にそういうカリキュラムができたとしても、そのカリキュラムを使った養成、研修は一体誰が責任を持って行うことになるのかということが、当事者団体の皆様方から大変不安に思われているわけでございます。 障害者団体の皆様方からは、手話通訳オペレーターの体制的整備、養成、研修など、誰が責任を持つのか具体的にしてほしい、その計画が示されることで安心できる、誰の責任のもとで行われる制度なのか、事業所だけに責任が押しつけられることがないように国の責任を明確にしてほしいとのお声も聞いております。 国や自治体の役割と責任はどこまでなのか、責任と役割の範囲の明確化を求める声は、当事者の皆様、その関係団体の皆様方から、ほかにも伺っております。 聞こえない人の、聞こえづらい方々の命、人権を守る業務を担うことになる通訳オペレーターの皆様方の役割は非常に重要だというふうに思います。通常の対面の通訳とはまた違った専門領域ですとか特殊な技能、知識を要することになります。 全日本ろうあ連盟の皆様方の意見書の中にも、主に当事者団体、聞こえない、聞こえにくい当事者団体による養成や研修への協力や意見の反映が必要であることを法律等に加えてくださいとの御意見をいただいております。 また、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全国要約筆記問題研究会の皆様方も、その実績から、人材育成、確保に大きく貢献できる、文字オペレーターの検討に際しては、検討会等への参加が可能となるように強く要望をされております。 通訳オペレーターの養成について、国が責任を持つこと、そして当事者の皆様方の参加、こうした声に応えていくべきだと思いますけれども、これは総務大臣と厚生労働副大臣にお願いしたいと思います。
高市国務大臣
電話リレーサービスにおいて、意思疎通の仲介を行っていただく通訳オペレーターは不可欠な役割を担っておられ、特に緊急通報の対応など、通常の通訳とは異なるノウハウも必要になると認識をしております。 このため、電話リレーサービスの特性も踏まえて、通訳オペレーターが適切に対応を行えるよう、総務大臣として、電話リレーサービス提供機関が体制整備や研修を適切に行うということを基本方針において定める予定でございます。
橋本副大臣
オペレーターの養成や体制の確保に向けまして、国としても一定の役割を果たしていく必要があると考えております。 このため、厚生労働省におきましては、これは先ほど申しましたとおり、地域生活支援事業による国庫補助でありますとか、各自治体が実施する研修において指導者となる者の養成等を行う委託事業の実施、あるいは、電話リレーサービスのオペレーターに求められる資質や養成カリキュラムに関する研究などに取り組むこととしておるところでございます。 また、本法律案におきまして、今、高市大臣からも答弁ありましたとおり、総務大臣は、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する基本的な方針を定めることとされておりますけれども、この基本的な方針の内容にはオペレーターに関する事項も含まれておりまして、厚生労働省もこの基本的な方針の作成や変更に協力をするということになります。 厚生労働省といたしましては、政府の一員としての責任を持って、総務省などとも連携をしつつ、オペレーターの養成や体制の確保に向けて、今後ともしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
~中略~
本村委員
ぜひ、しっかりと一般労働者の平均賃金は保障できるように積算をするべきだということも強く申し上げたいと思います。 オペレーターの方々、関係団体の皆様からは、働く人の健康問題が一番心配、二十四時間三百六十五日になると、深夜の場合、一人職場になる可能性がある、一人で待機して、電話がかかってこない場合でも八時間一人で拘束されれば、精神、メンタルを壊してしまうとのお声も聞いております。 ワーキンググループの委員からも、対人の翻訳業務は非常に精神的にも過重であって、電話という特殊なツールの中で翻訳していく行為は、それにも増して精神的なストレスや過重労働が懸念されるということが指摘をされております。 健康診断ですとか、労働安全衛生上の職業病を予防する方策の強化ですとか、保障の強化ですとか、オペレーターの健康を守る、しっかりと保障していくということは当然求められるというふうに思いますけれども、厚生労働副大臣、お願いしたいと思います。
橋本副大臣
お答えをいたします。 手話通訳をされる方が、業務上、例えば、先ほどちらっとお触れになりましたが、頸肩腕障害というのをされたり、あるいは今お話しいただいたような精神的なプレッシャーだとか、そうしたこともあるんだろうというふうに思います。そうしたことによってさまざまな健康の障害が出るということは予防しなければいけないというのは、全く大事な観点だというふうに認識をしております。 このため、厚生労働省におきましては、自治体が手話通訳者等の派遣事業を行うに際しては、手話通訳者の健康管理にも留意するように通知をしてきておりまして、具体的には、意思疎通支援者に対する頸肩腕障害に関する健康診断の実施、あるいは、業務の内容や時間を勘案した複数体制の確保などをお願いしているところでございます。 また、今年度、手話通訳者に対するアンケート等を行う調査研究事業を実施する予定としておりまして、まずは、健康面などに関する課題をより明らかにしたい、その中で今お話しいただいたようなことにつきましてもしっかり取り組めればいいな、このように思っているところでございます。 いずれにいたしましても、厚生労働省といたしましては、総務省や実施機関と連携をしながら、電話リレーサービスのオペレーターの健康管理にもしっかりと留意をした制度設計を行ってまいりたいと考えております。
本村委員
ありがとうございます。 次に、聴覚障害者の負担軽減という問題で質問させていただきたいと思います。 聴覚障害の方々の働いている方の平均賃金というのは、厚生労働省の調査では、月二十万五千円だということでございます。先ほども申し上げましたように、同じ二〇一八年で賃金構造基本統計調査を見てみますと、一般労働者は男女計で三十万六千二百円ということになりまして、やはり十万円以上の開きがございます。 雇用率もやはり健聴者よりも低くなっておりまして、例えば、障害者生活実態という東京都の調査を見てみますと、聴覚障害がある方の収入を見てみますと、複数回答ですが、年金の方が八〇・五%、賃金、給与が二一・七%ということで、年金が主な収入であるという方が多いわけでございます。 そして、長崎県の高齢聴覚障害者実態調査報告書、これは二〇一七年のものですけれども、見させていただきますと、五十五歳以上の会員全員と離島の非会員の方ということなんですけれども、年収六十万円未満というのが三%、六十万円から百二十万未満が五一%ということで、半分以上が百二十万未満の年収ということで、相対的貧困率の基準、二〇一七年は百二十二万円ですから、やはり経済的に苦しいということがわかるわけでございます。 この電話リレーサービスには、スマートフォン、パソコン、タブレットなどの通信機器が必要ですし、動画を送るということになりますと、外でデータが多いということで大変値段が高くなってしまう通信料金もございます。また、電話料金が必要になってまいります。お金がないと電話リレーサービスを使うことができない、こんな制度にしてはならないというふうに思います。 厚生労働省には、日常生活用具の支援制度がございますので、ぜひ電話リレーサービスに使う通信機器を日常生活に入れること、そして福祉電話の制度で利用料金も支援していただくということ、そして総務省にもトータルな負担軽減策をとっていただきたいと思います。最後にお願いしたいと思います。
大口委員長
橋本厚生労働副大臣、もう時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
橋本副大臣
それでは、ちょっと簡潔に申し上げますが、今御指摘の日常生活用具給付等事業につきましてですけれども、これは要件がございまして、一般に普及していないものというものがその要件の中に入っております。 御提案のありましたタブレットやスマートフォンにつきましてはその点に合致をしていないということでございまして、現時点では、障害者以外の方々との公平性の観点から、日常生活用具給付等事業の支給対象とするのは適当ではない、このように考えているところでございます。 いずれにいたしましても、厚生労働省といたしましては、障害者の自立と社会参加の促進に向けて、各般の施策の充実に努めてまいります。