第197回国会 厚生労働委員会 第7号(平成31年1月24日(木曜日))

冨岡委員長

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。橋本岳君。
 

橋本(岳)委員

 皆さん、おはようございます。自由民主党の橋本岳でございます。
 今回の件、私も、以前、大臣政務官や副大臣として厚労省にいた時分のことも入っておりますので、自分にも責任がかかるということは認識をしておりますが、きょうは、一人の議員としてただすことで、まずはその責任を果たしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
 先日二十二日に報告書が公表されました。迅速な対応をいただいたことに感謝を申し上げたいと思います。ただ、全てが納得できたわけではございません。そのことについて幾つかただしてまいりたいと思います。
 まず、資料をお配りをしておりますので、委員の方はごらんをいただきたいと思いますが、一枚目、報告書の二十八ページから抜粋をした一節がございます。「統計がどのような形で利用されているのかということについて、想像力が著しく欠如していたと言わざるを得ない。」こういう指摘があるわけでございます。
 統計担当者個人のレベルではこんな指摘もあり得るのかなと思わなくはないですが、資料の二枚目、一枚めくっていただきますと、厚生労働省のウエブサイトに出ている資料、この「毎月勤労統計調査結果の主な利用状況」というのがウエブサイトに出ておりまして、失業給付の額の算定とか、労働災害の休業補償とか、労災保険の保険給付とか書いてあるんですよね。何で、厚生労働省の人が、厚生労働省が公表している厚生労働省の事務を把握するのに想像力が要るんですか。そんな話ではないですよね。
 今回、厚生労働省が、姿というのは、厚生労働省が当たり前に把握していなきゃいけないことを、全く認識しないでいいかげんな統計をつくって、結果、こうした給付を過少にして国民に大迷惑をかけた、そういう姿じゃないですか。何で想像力の話になるんですか、これが。到底納得できるものではない。この国民に大きな迷惑をかけた責任は重いと思います。大臣、どうお考えでしょうか。
 

根本国務大臣

 委員の御指摘は、私ももっともだと思います。
 毎勤統計というのは、月々の賃金、労働時間、雇用の変化を迅速に把握することを目的とする調査であって、今委員の御指摘のように、統計法で基幹統計とされておって、雇用保険の失業給付の算定や労災給付などに用いられている重要な統計であります。
 このような政策立案、保険給付や学術研究等の基盤として、常に正確性が求められる毎勤統計において、予算の組み替えも含めて、このような事案を起こしたこと、これは私もまことに遺憾であって、起こしてはならないことであります。
 報告書においても、想像力が著しく欠如したという御指摘もありました。そして、その前段に、国民生活に大きな影響を及ぼす公的統計において不適切な取扱いが長年にわたり継続したことは信じがたい行為であり言語道断と、厳しく指摘をされております。私も、返す言葉もありません。
 この想像力が著しく欠如という指摘をされた今回の事案の背景には、厚生労働省として、統計の正確性というものに対する余りにも軽い認識や組織としてのガバナンスが欠如している、これは監察委員会でも指摘をされております。これは私も真摯に受けとめなければならないと考えております。
 今回の事案、真摯に反省して、そして国民の皆様の信頼回復に全力を挙げて努めていきたいと思います。
 

橋本(岳)委員

 続けてお尋ねをしていきたいと思いますが、資料の3というやつ、報告書の二十五ページから二十六ページの抜粋でございます。
 これは、大臣がいつ御存じになったのかというときの話でございますけれども、引用しているところによりますと、このときは政策統括官Jさんと雇用・賃金福祉統計室長Iさん、こういう登場人物ということになっておりますのでそう申し上げますが、この二人は十二月二十日に厚生労働大臣に一報されたということになっております。
 ただ、翌日、二十一日にこの毎勤統計の十月分の確報の公表をしているわけでございますけれども、ここの一節では、その内容を説明しなかったということになっておりますし、なぜしなかったのかというと、思いが至らなかったから、こういうことになっているわけですね。
 じゃ、その十月分の確報ということでどんな公表をしているか。その一枚が、資料の四枚目についております、4と書いてあるやつ。これは、前年比とか前年差の表でございます。
 二〇一八年一月から補正をしていたわけですから、その年の平均値というものは確かに正しかったと言えるかもしれません。しかしながら、二〇一七年十二月までの数字というのは、補正をしていなかったというのをこの時点では把握しているわけですから、補正をしなかった数字と補正をした数字の比較をしたり差をとったりするのはおかしいですよね、不適切ですよね。そのことに思いが至らなかったというのはどういうことですか。
 あるいは、大臣は、この報告書を信じれば御存じではなかったということなのかもしれませんけれども、それならばそれで、不適切な統計を発表して、管理不行き届きじゃないですか。どう考えられるんですか。
 

根本国務大臣

 本件事案については、十二月二十日に事実関係の一報を事務方より受けました。
 私がその時点で聞いたのは、具体的には、五百人以上規模の事業所において全数調査とすべきところ、東京都において抽出調査を行っていたということ、抽出調査の結果を必要な統計的処理、要は抽出率を考慮して復元するということ、これを行わずに集計していたということが判明して、その報告を受けました。
 ですから、私も、その報告を受けたときに、経緯など、あるいは原因、いろいろな状況、これは速やかに徹底的な調査を行うよう指示をいたしました。そして、結果的には、二十一日に十月分の確報値をそのまま公表しておりました。
 私も、実はその後、事務方にこれを確認いたしました。その時点では、私も次の日に確報値を公表するということまでは把握しておりませんでした、その時点では。ですから、その後、事務方に確認いたしました。確認しましたところ、今回の事案について具体的な経緯等が明らかでなかった状況の中で、毎月定例の業務として、今回の事案と関連づけることなく事務的に公表したものであって、事務方の責任者が、確報まで思いが至らなかった、問われてそういう話をしたということを聞いております。
 私も唖然とする思いではありますが、国民の皆様、統計にかかわる皆様に御迷惑をおかけしておりまして、今後、正確性、継続性に留意しながら、毎勤統計、早急な、取扱いとなるようにしていきたいと思います。
 そして、この不適切な取扱い、統計の信頼性だけではなくて、組織としてのガバナンスが問われておりますから、厚生労働省という組織に対する信頼回復に全力を挙げるべく、私も先頭に立って取り組んでいきたいと思います。
 

橋本(岳)委員

 総務省に指摘されたのは十三日ですよね。二十日に大臣のところにお話が行かれましたよね。その一週間、何をやっていたんですかね。それで思いが至らなかったで済むんだったら、ぼうっとして生きていたら、五歳児じゃなくたって怒りますよ。信じられるわけないじゃないですか、そんな話。
 続けます。
 今回、東京都について、抽出率は公表しないで勝手に変更されていたということでございますけれども、そのことで、意図的あるいは作為的に抽出がなされたのではないか、統計に何らかの、上にしたいのか下にしたいのか、意図を持って抽出したのではないかという疑いがかけられております。
 資料5として、厚生労働省が統計委員会に出した資料で抽出の方法が書いてありますのをつけておりますが、このとおりしてあれば妥当ということだとは思いますが、厚生労働省の資料が信用できるんだったらこんな話になっていないんですよ。このとおりにやった証明はないんです。報告書にもありません。何で報告書で触れていないんですか。
 

大西政府参考人

 抽出の方法、あるいは今御指摘ありました実態等について、今般の特別監察委員会の報告書で触れられていないということにつきましては、特別監察委員会では、今般の毎月勤労統計調査に関して発表された一連の不適切事案等について検証の対象としておるところでございまして、この取りまとめ時点において抽出の方法につきまして問題点として把握されていなかった、そういう経緯であるかと存じます。
 

橋本(岳)委員

 公表されずに抽出をしていましたと言っていたわけじゃないですか。それが事案に含まれないという意味がわからないんですけれども。今の答弁で何で通じるのか僕にはさっぱりわからないんですが、まあ続けます、しようがないので。
 抽出が変だったんじゃないかという疑いを晴らす方法があるんです。
 というのは、本当に過去のことについて言えばわからないかもしれませんけれども、昨年六月に神奈川県、愛知県、大阪府に抽出でやるという通知を出して、実際に名簿がつくられました、後で撤回されましたけれども。そのときにどんな抽出をしていたのかということを、この監察委員会なりあるいは総務省や統計委員会などに、第三者の目で、ちゃんと抽出していたのかどうかチェックしてもらえれば、それが正しく抽出していたのかどうかということは人に認めてもらうことはできるはずです。
 ぜひその調査をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
 

大西政府参考人

 毎月勤労統計調査におきましては、無作為抽出という手法でございまして、基本的には、事業所・企業母集団データベースから事業所データを入手し、産業、事業所の規模区分あるいは番号順に並べた上で、抽出率逆数に従って、等間隔に調査対象となる事業所を選出しておる、こういう手続をとっておるわけでございます。委員からお示しいただきました資料におきまして、統計委員会でも御審議をいただいているところでございます。
 私どもといたしましては、ただいまの委員の御指摘も踏まえまして、引き続きこの統計委員会でしっかりとした御審議を、専門家の目でチェックしていただく、そういうことをしていただけるようにしてまいりたいと考えております。
 

橋本(岳)委員

 繰り返して言いますけれども、統計委員会で抽出率だとかそういうもののうそをついていたのはあなたたちですよね。だから、統計委員会でこんな資料で説明しているからいいんだなんて話にならないからこんなことになっているんですよ。プログラムだとか実際に抽出されたリストとかを見てもらえればそこはわかるかもしれません。ぜひ御検討いただきたいと思います。
 続きまして、資料の六枚目を見ていただきたいと思いますが、来年度予算、これから審議されるであろう来年度予算の概算要求書でございますが、ここでも調査対象の数が、全国調査、三十人以上が一万六千六百七十五事業所、五人から二十九人のところが一万六千五百事業所、合計すると三万三千百七十事業所ということになりますが、枠で囲ってあるところです、そう書いてございます。でも、実際、これもうそだったんですよね。三万件か三万件弱ぐらいしか調査していなかった。
 これは来年度予算の概算要求書ですけれども、毎年こういう要求をしていたんじゃないですか。財務省にうそをついて予算要求をしていたんですよね。何でそのことが報告書に触れられていないんですか。
 

土生政府参考人

 監察委員会の事務局の立場から御答弁させていただきます。
 先生御指摘のように、毎月勤労統計調査、全国調査でございますけれども、規模三十人以上の第一種事業所の数、規模五人以上二十九人以下の第二種事業所の数の合計を、調査対象事業所数ということになっているわけでございます。
 この点につきましては、報告書におきましても、全体として公表していました事業所数と実際の調査対象数の違いの問題という中で、全国調査は今申し上げましたような小規模の事業所あるいは三十人以上の事業所の二つの調査に分かれておりまして、全国調査はその数の合計であるということも記載されていることでございますので、そうした点も踏まえまして、全体的な事案の事実関係の究明、責任の所在の評価がなされたものと承知いたしております。
 

橋本(岳)委員

 意味がよくわからなかったんですけれども、正直言って。
 財務省にお尋ねをします。来ていますよね。
 概算要求でこうした形で実際と違う数字で要求をされていたということが明らかになっているわけですが、仮に、一般的に、ある年まで三万三千件の調査をやると言っていた、次の年から概算要求が、例えば、誰かが正しく公表しようということになって、三万件の要求ということで直ったとします。予算額への影響はありますよね、一般論として。
 

宇波政府参考人

 お答え申し上げます。
 基幹統計でございます毎月勤労統計調査、この調査に要する経費につきましては、予算上は義務的経費というふうにされております。
 予算計上に当たって、本統計調査の対象事業者数の考え方につきましては、厚生労働省から要求いただくに当たって、総務大臣に承認を受けた調査計画、ここに計上されている対象事業者数が載った形で予算要求をいただいておりまして、予算上は、この本計画に示された事業所数に応じまして、もちろんそのほかに物価だとか人件費だとかその他の要素はございますけれども、そういった要素も勘案しながら所要額を計上してきたところでございます。
 したがいまして、この調査計画に示された対象事業者数が仮にふえたり減ったりして、これに伴って概算要求の内容が変わった場合には、その増減を踏まえまして所要額を計上することになるというふうに考えてございます。
 

橋本(岳)委員

 当然のことだと思うわけです。
 今回の報告書、何で全数が違ったのかを公表しなかったのかということも調査の対象だったと思いますが、予算が減るからじゃないんですか。何でそのことを報告書で触れていないのかがやはりわからないんですよ。役所の人だったら誰でも思いつきますよね、きっと。まあ、来年度の予算が適切であることを願いますけれども。
 さて、いろいろ思うところをただしてまいりましたけれども、きょうもこれからも指摘はたくさんあるでしょう。それについて、補足をした調査なりなんなりというのはぜひやっていただきたいと思いますが、そのおつもりがあるか。
 それから、再発防止策は今後の検討ということになっておりますが、そのめどというものがあれば、ぜひ早くしていただきたいと思いますが、お願いをしたい。
 時間がないので全部まとめて聞いてしまいますが、厚労大臣の冒頭発言で、三月から追加の給付をしたいというような御発言がございましたが、雇用保険、労災保険、船員保険、それぞれありまして、事情も違うと思います。それぞれの取扱いについて教えてください。
 

土生政府参考人

 御質問の二点につきまして、私の方から御説明をさせていただきたいと思います。
 今回の特別監察委員会報告書は、一月二十二日に取りまとめをいただきまして、大臣に手交されたものでございます。それを踏まえまして、厳正な処分等がなされたということでございます。本委員会の今後の活動につきましては、再発防止策を検討するということになっているわけでございます。
 御指摘の点につきましては、二十二日の記者会見におきまして、樋口委員長からは、事実関係及びその評価については、持っている全てのものについてもう既に検証したというふうに考えているとおっしゃっている一方で、もしほかから何か出てくるようなことがあれば、私はないというふうに思うが、もしあるとしたら、それについては当然検証するということになるのではないかというふうに御発言されているということでございまして、事務局としましてはその判断に従うべきものと考えております。
 また、再発防止策につきましては、引き続き御議論いただくこととなっておりまして、できる限り早く取りまとめていただけるようお願いをしておりますし、事務局としても全力を挙げていきたいと考えております。
 

土屋政府参考人

 お答え申し上げます。
 追加給付につきまして、そのめどを可能な限り早期に国民の皆様方にお示しをしていくことは大変重要であるというふうに考えております。
 雇用保険につきましては、まず、現に受給中の方々について、再計算をした金額での支給ができますよう、システム改修や法令の整備などを急ぎまして、三月中に、切りかえの日以後失業していた日について再計算した額での支給を開始をしたい、開始する予定であるというふうにしておるところでございます。
 一方、既に支給が行われた分につきましては、過去に受給したことがあり、現在は受給が終わっている方の分も含めまして、現住所の把握などの追加の作業が必要であることから、作業スケジュールの検討にいましばらくお時間をいただきたいというふうに考えております。できるだけ速やかにスケジュールをお示しできるよう努力してまいります。
 

坂口政府参考人

 お答え申し上げます。
 労災保険の関係でございますけれども、今の雇用保険と同じような考え方に立ちまして、労災年金につきましては、今後新たに支給が行われる分に関しまして、四月、五月分から再計算した金額で支給を開始する予定とさせていただきたいと思っております。
 また、休業(補償)給付につきましても、今後新たに支給が行われる分に関しまして、四月分の休業であって請求があったものから、順次、再計算した金額での支給を開始する予定でございます。
 一方で、既に支給が行われたものにつきましては、他の給付との併給調整の精査あるいは現住所の把握等の追加作業が必要なことから、いましばらくお時間をいただきたいと考えておりますが、できるだけ速やかにスケジュールをお示しできるように努力してまいりたいと考えております。
 

樽見政府参考人

 船員保険の関係でございます。
 船員保険につきましては、障害年金や遺族年金に係ります追加給付の対象となり得る方、約一万人と推計しておりますけれども、その住所情報がオンラインデータで保管をされてございます。
 それから、追加給付に伴う特段のシステム改修も不要でございますので、対象者の特定や給付額の確定作業を急いで進めたいと考えておりまして、今後、速やかに対象者の特定作業を進めるとともに、まず、現在受給中の方について、給付額を改定する通知を送付した上で、ことしの四月中旬に、現在利用中の口座に追加給付を行いたいというふうに考えております。
 

橋本(岳)委員

 終わります。