第200回国会 衆議院 厚生労働委員会 第4号 (令和元年11月8日(金))

高木(美)委員

今回取りまとめた骨子案におきましては、ハンセン病問題の解決の促進に関する法律における名誉回復等の規定の対象に、家族を新たに追加することとしております。これは偏見、差別解消の施策を進める上で推進力となると考えております。
 十月二十四日、両議員懇談会の合同会議におきまして骨子案が了承された際、原告団長から、胸がいっぱいだ、きょうの日を迎えることができてありがとうの言葉しかない、今後は偏見、差別解消に向けた啓発、教育が大きな課題になるという旨のお話をいただきました。
 この点につきましては、七月十二日閣議決定の内閣総理大臣談話におきましても、「関係省庁が連携・協力し、患者・元患者やその家族がおかれていた境遇を踏まえた人権啓発、人権教育などの普及啓発活動の強化に取り組みます。」とあります。
 とりわけ、厚労、法務、文科の果たす役割は大きく、今後の三省連携での一層の取組を期待しております。
 橋本副大臣を始め、宮崎法務大臣政務官、また文科省、それぞれから、ハンセン病に係る偏見、差別解消に向けた取組への決意を伺いたいと思います。一言ずつお願いいたします。
 

橋本副大臣

先月、厚生労働省、法務省、文部科学省と原告団家族代表の皆様方などとの協議の場として、ハンセン病に係る偏見、差別の解消に向けた協議会を立ち上げ、御家族の方々から貴重なお話や御意見をお伺いしたところでございます。
 そして、その中で、例えば、国というのは無らい県運動というのをやってきたわけですね。そうした大キャンペーンを張って患者の方を療養所の方に隔離するということを、ある意味で官民を挙げてという言い方もできるのではないかと思いますが、そういうのをやってきた歴史があったわけであります。例えばそうした勢いでなぜ普及啓発ができないのかということも問われましたし、一方で、そうしたことをこれまで国がずっと率先してやってきて、ある日から突然、ハンセン病の方々に対する差別、偏見を解消しましょう、そんな手のひら返しなんか誰も通用しない、そんなお話もいただきました。また、国のいろいろな施策、取組というのはなかったわけではございませんが、やったらやりっ放しだというお話もいただきました。
 そうした厳しいお声をたくさんいただいた、これを私たちはしっかりと受けとめて、偏見、差別の実態を踏まえるべきだとか、謝罪広告など名誉回復措置を実施すべきだとか、家族関係の回復に向けた施策を実現すべき、そうしたこともいただいたわけでございます。
 今後、まず実務的に具体的な議論をするということになっておりますけれども、そうしたことも踏まえながら、法務省、文部科学省とも連携し、そして、これは総理が所信で、政府一丸となりという表現もされました。そのこともしっかりと受けとめながら、そして、元患者の方々、御家族の皆様とも議論を深め、全力で取り組んでまいりたい、このように考えております。
 

宮崎大臣政務官

患者、元患者の方のみならず、御家族にも、社会において大変厳しい偏見、差別が存在しているということは厳然たる事実でございます。
 今、橋本副大臣から言及がありました、先月、十月二日の原告団、弁護団の皆様との協議の場、私も法務省を代表して出席をさせていただきました。
 その際に、御家族の方から、御両親は病気になりたくてなったわけではない、でも、この世で一緒に暮らすことができない、その悲しみがあって、その御家族の方は、分骨をしてでも将来あの世で一緒に暮らして、失った時間を取り戻したい、こんなお話も聞かせていただきました。重く受けとめなければいけないと改めて思った次第でございます。
 患者御家族、患者、元患者のみならず、御家族の方を含めた偏見、差別の解消に向けた普及啓発活動のあり方については、皆様と一緒に、ともに考えていきたいという旨のお話もさせていただきました。
 法務省としましても、原告団の皆様を始めとして、当事者の皆様の御意見を伺いながら、厚生労働省、文部科学省とともに、偏見、差別の解消に向けた取組を一層推進していきたいと考えております。
 以上です。
 
~中略~
 

泉委員

ありがとうございます。
 この辺は、実際に施行されてから、ちょっとやりにくいだとか、いろいろ改善点が出てくると思いますので、ぜひ、原告団ですとか弁護団、さまざまな当事者の方からの御意見も聞いて、より実効性のあるものにしていただきたい。我々も提言をきょうしましたけれども、ぜひ聞いていただければと思います。
 さて、ここからですけれども、やはり、先ほどお話をしたように、必要な添付書類が煩雑にならないことだとか、あるいは余り過度な立証が求められないことというのが大事だと思います。
 要は、請求の審査において必要なのは、患者がハンセン病患者であったことの証明と、その御家族である、御親族であるということの証明、端的に言えばそういうことだと思うんですね。
 その意味ではなんですけれども、今一つ課題になっているのが、入所証明書をとれるかどうか、入所証明書をいただけるかどうか、これがある意味、場合によっては患者本人の意思に委ねられてしまう。家族であることはどう見たって家族なんだけれども、入所証明書が得られないなんということになってしまえば、これは果たして本当に家族の関係の修復になるのか、逆になってしまうんじゃないかということすら考えてしまうわけであります。
 そういったことをいかにして減らすかということで、きょう三つほど提言というか提案をしたいんですけれども、まず一つは、国から先ほど話のあった給与金が支給されている方々、これは国から支給されているわけであります。そういった方々は当然患者でありますよね。であるならば、家族の側から、私の家族はいつ発病して、どの診療所にいて、ああです、こうですという証明の書類を送らなければそれは認められませんというのではなく、この給与金が渡されている方々については家族関係さえ証明されればよいのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか、副大臣。
 

橋本副大臣

お答えをいたします。
 補償金の支給の認定審査に当たっては、先ほど、ハンセン病元患者に該当するかどうか、それから当該元患者と一定の家族関係があったかどうかというお話をされましたが、同居要件がある場合には、同居をしていたかどうかについても確認する必要があるということは一点補足させていただきたいと思います。
 その上で、今御指摘の事例についてですが、おっしゃるように、確かに、国ないしは療養所は、ある方が元患者であったかどうか、入所されていたかどうか、あるいはその給付を受けていらっしゃったかどうかという記録は当然持っているわけでございますが、一方で、これは元患者その方の個人情報に当たるということで、私たちとしては個人情報保護法令に基づいた取扱いをしなければならないという立場にもございます。
 これは一般論として申し上げれば、例えば、ある方はハンセン病元患者の方ですかと聞かれて、それはやはりその元患者の方の同意がなければ国としては答えられないというのが個人情報保護法上の取扱いということになるわけでございます。
 そういう意味で、今お話しになったような例であって、例えば、給付を受けておられれば、給付の通知など、もちろん、それに関する書類を御家族の方でお持ちになっておられれば、それは一つの証明になろうと思いますが、国の方でこの方は元患者の方かどうか確認をしろということを言われるということになるとすれば、そこはやはり難しいと考えております。個人情報保護法上するべきではないというふうに思っております。
 そういう意味で、先ほどもお話がありましたように、やはり、入所者の方々にきちんと私どもも今回の補償の趣旨等についてお話をし、円滑な支給について図っていくということが大事なのだと思っております。
 

泉委員

そこをぜひ乗り越えていただきたいというか、この方がハンセン病患者でありましたとかということを、申請のあった御家族に一つ一つ通知をする必要はないと思うんですね。
 要は、国が確認する段階で、その方が給与金の対象者だったかどうかということを確認すれば、それは患者であったということの証明になるわけですから、何もそれを相手側に、この方は患者でしたとか、ではありませんでしたということを別に通知する必要はない。何とか乗り越えていただかないと、家族だといって請求をしたけれども、実際に受け取れない方がやはり出てくると思うんですね。ここを何とかしていただきたいなというふうに思います。
 もう一つ、やはり、認知症や寝たきりのケース、御自身で意思を表明できない方、こういう方々については明示的な反対がない限りは入所証明書を交付するという運用があってよいのではないかというふうに思いますが、いかがですか。
 

橋本副大臣

御質問の趣旨というものは私たちもとてもよくわかるのでありますけれども、やはり、個人情報保護法上、同意というものが必要だ。
 要するに、目的外の情報の利用についてはという縛りがかかっている以上、例えば寝たきりの人であろうと、例えば明示的な意思表明が難しいような状況の方であろうと、やはり、だからといってそこのところを緩く運用するということは困難であると思っております。
 

泉委員

また、さらに、例えば、親族の中のこの人から請求があったときには、当事者の方は手続に応じて、患者であることの証明を、入所証明書を出した、別な親族が出した場合にはその証明書を出さなかったというケースも場合によっては出てくると思うんですね。
 こういうことも、一度その方が患者であるということを御自身で入所証明書という形として出したのであれば、他の家族が請求をしたときにも、それは一度、意思というか、御自身としての患者であるということを出しているわけですから、他の家族、親族でも対象者であればそれを使えるようにしてもよいのではないかと思いますが、これも難しいですか。
 

橋本副大臣

今お話しになった例について申し上げれば、それは、私たちはやはり元患者の方の個人情報保護の観点というのは踏まえなければなりませんが、一方で、場合だとか、どういう形でそうしたことを御証明いただけるかということにもよろうかとも思いますので、多分、幾つか要件などを私たちも考える必要があろうと思いますが、整理してみたいと思います。
 

泉委員

ぜひ、そこはできる限り、請求した方が、周りから見ていてもそれはもう御家族なのにという状況で、残念ながら請求が実らないということにならないようにしていただきたい。
 最後に、ちょっと時間がなくなってしまったのであれなんですが、先ほどから大臣の方が、家族関係の修復には専門家の支援が必要だということをおっしゃられる。また、当事者についてのエンパワーメントということも大臣はおっしゃられました。
 ぜひ、十月二日に行われた協議の場ですが、これを継続してほしいのと、やはりその中で、先ほど、専門家による支援が必要だとか当事者によるというものがありましたので、それぞれ部会をつくっていただいて集中的に議論していただく、そういう場があってもよいのではないかと思いますが、この質問を最後にさせていただきたいと思います。
 

盛山委員長

時間となっておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。
 

橋本副大臣

今いただいた御意見、御指摘も踏まえて、しっかり家族の方、また関係者の方々と協議をさせていただきたいと思います。
 
~中略~
 

藤田委員

日本維新の会の藤田文武でございます。
 ちょっと冒頭、他党の先生からも社会保障検討会議の議事録削除の件がありましたので、我が党と私のスタンスも少しお話しさせていただきたいと思います。大きな改革を進める中で異論はあると思いますけれども、その異論をこういった形で処理してしまうのではなくて、所管は違うと思いますが、いろいろな異論を正面から受けとめて、本当の本質的課題に取り組むという姿勢をぜひ大臣には見せていただきたいですし、本質的な議論のために我が党の提案も出させていただきたいというふうに思います。
 一方で、所管外の委員会等が、他の委員会も今ちょっと混乱しているというのを聞いておりますが、やはり、所管外の委員会に関しては、特に厚生労働委員会に関しては幅広い課題を扱う非常に重要な委員会でございますから、質疑の時間、そして委員会の日程等、私は粛々と進めていただきたいという立場を表明いたしまして、質問に入りたいと思います。
 本日、ハンセン病についてでございますが、いろいろな角度から他党の先生方が御質問されておりますので、私もそもそも余り詳しくはなかったんですけれども、この委員会に入りまして勉強しまして、学べば学ぶほど、元患者、そして元患者の御家族、関係者の皆様の悲痛な叫びを見聞きいたしまして、本当に、国会議員の一人として、これから覚悟を決めてこの問題にも向き合っていきたいというふうに思うわけでございます。
 今回の補償について、家族に補償をしっかりとしていくということと本質的課題を解決に向けて進めていくというこの法案に関しては、金銭で解決できるものではありませんが、他のいろいろな要件も入っておりますので、一歩前進ということで、本当に、この法案に携わられた各委員の皆様、議員の皆様に感謝申し上げたいと思います。
 その上で、今後の差別、偏見をなくしていき、人権侵害等を、国家のこういう不良な政策によって迫害されてしまったようなこの事案を引き起こさないために、そして復権を引き続き進めていくための覚悟を含めて、取組を教えていただけたらと思います。
 

橋本副大臣

偏見、差別等の解消等につきまして御質問をいただきました。
 これは先ほども同じ問いをいただきましたけれども、先月、厚生労働省、法務省、文部科学省と原告団、家族代表等の協議の場として、ハンセン病に係る偏見、差別の解消に向けた協議会を立ち上げ、御家族の方々から貴重なお話や御意見を伺ったところでございます。
 先ほどこれは委員も触れられましたけれども、結局、この差別の問題というものの大事なことは、というか私たちがきちんと踏まえておかなければならないことは、国が誤った隔離の政策を行い、そのことによって一般国民の方々にそういう意識を植え付けてしまったということに対して、しっかりとした反省と、そうしたことを二度と起こさないという覚悟を持って取り組むべきことなのだろうというふうに、その協議でいろいろなお話を聞く中で思ったところでございます。
 先ほども触れましたが、無らい県運動といったキャンペーン的なことを行ってきたわけでありまして、だとすれば、差別、偏見を解消する、これは簡単なことではないかもしれない、時間がかかるかもしれませんけれども、やはり、それ以上の力を持って取り組まなければならないというふうに思っているところでございます。
 具体的には、今事務方の協議というのをやっておりまして、それも踏まえて具体的な取組というのを、取り組んでまいりたい、議論をしてまいりたいと考えておりますが、元患者の方々あるいは御家族の皆様と議論を深め、偏見、差別の解消に向けて、法務省、文部科学省とも連携して全力で取り組んでまいりたいと考えております。