第203回国会 参議院 厚生労働委員会 第7号 (令和2年12月3日)

石田委員

自由民主党の石田昌宏でございます。  この法案、ある意味でかなり異例なプロセスを経ていると思いまして、本則見ると百三十七条もあって、附則が更に三十四も付いていて、これだけでかい議員立法はなかなか見たことがないですし、参議院で全会派質問に立つというのもなかなか議員立法でないもので、それだけきっと思いが込められているんだと思います。私の事務所にも桝屋先生が何度も何度もいらっしゃってくださって、ある意味その気迫というか執念というか、そういうものを感じながら過ごしていました。  ある意味それもそのはずで、歴史をちょっと振り返って見てみますと、この協同組合を意味するんでしょうかね、ワーカーズコレクティブ、第一号が誕生したというのが一九八二年というふうに物のページに書いていました。もう四十年近く前になるんですね。その頃から、法律がないにもかかわらず、自分たちでこういった活動を始めていらっしゃる方が実際に地域に貢献して成果を出して、それがだんだんだんだん全国に広がっていって法制化しようという、こういった長い歴史を持っています。今日傍聴に来ていらっしゃると思うんですけれども、民間の方々も法案要綱を最初にまとめたのが一九九七年ということです。その後、法案を実際法制化しようという活動がずうっと続けられて、議員連盟、坂口前厚生労働大臣がつくられたんですかね、議員連盟が二〇〇八年にできてようやく今日に至るということで、ある意味皆様この瞬間を記念すべき時間として過ごしていらっしゃるんじゃないかなと、関係者の方々の心情を拝察いたします。  ただ、この長い歴史があるからということじゃなくて、むしろ中身を見てみると、今日的な日本の課題を解こうとしている重要なものじゃないかなというふうに思っています。というのは、高齢社会ですとか人口減少社会ですとか、そういった社会の中では今キーワードとなっているのが、例えば地方創生ですとか地域包括ケアとか地域づくり、町づくりですとか、まさしくそういった言葉で、それは自分たち自身が一人一人が主役となって、またかつお互いに支え合いながら自分の地域をしっかりと守ってつくっていこうと、そういった考え方だと思います。  この労働者協同組合法案も、まさしく自分たちが出資し、自分たちの意見で、自分たちも働きながら、公のために地域のために尽くしていくといった意味ではまさしくこの理念が一致するものであって、是非これから進めていかなければならないものだなというふうに感じています。様々な課題があったと思いますが、ここまで来たことに対しまして関係者の皆様方に敬意を表したいと思います。  そこで質問に入りますが、最初に実は私も、今感想めいたことを言いましたけど、基本的な考え方とか背景、目的について聞こうと思ったんですけど、どうやらそれを聞くと思いがあって答弁が長くなってしまうことがよく分かりましたので、これ省略いたします。  まず、幾つか議論深めなきゃならないと思いますので、それについてお伺いしたいと思います。  まず一点目なんですけれども、自民党の中だと思います、立法の過程の中で、この労働者協同組合というのが地域で頑張っている中小企業の、例えば事業承継とかに使えるんじゃないかといった議論があったと思うんですけど、この点についてちょっとまずお伺いをしたいと思います。
 

橋本委員

思いについてお尋ねはなかったのでありますが、福祉の現場では、例えば地域共生社会というキーワードが言われております。この組合も、そうしたものにも実はフィットする概念のものではないのかなというふうに思って、是非進めていきたいと思っているということは申し添えたいと思います。  事業承継でございますけど、例えば、中小企業のオーナーなどが御高齢で引退をされるといったときに、従業員が出資をしてこの組合をつくってその事業を引き継ぐ、そんなイメージでの議論があったんだろう、ありました。海外における事例もあると聞いておりまして、この労働者協同組合が受皿になるという可能性も十分にあるのではないかと思っております。  ただ、今回の法制度、法律、法案につきましては、例えば実際にはそうした場合には財産の移転等々をどう考えるかといった論点というのは考え得るわけでありまして、そうしたところについては今後の議論というふうな整理だと思っております。  まずは、この法案を是非成立をさせていただきまして、その労働者協同組合制度の普及というものに注力をし、その上で更に議論を続けていきたいと思っております。
 

石田委員

ありがとうございます。そうですね、今後また議論があるかと思います。  次に、さっきもちょっといろいろと述べていたんですけれども、基本的な理念はとても大事で、ここで一つ、法律の中に、組合の事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映させること、ここかなり強調されています。ある意味、組織が構成員の意見を聞くというのは当たり前のことだと思うんですけれども、その仕組みがこれまでの協同組合とかとは違って、出資組合でまずあるにもかかわらず、出資、普通、口数によって発言って違ってくる、発言権って違ってくるんですけれども、出資口数によらずに一人一人が一票といった議決権のやり方とか、あと組合員に事業への従事を求めるとか、かなり特徴的なことがあります。  したがって、この組合員の意見が適切に反映させるというようなここの文言がどうもこの法律のポイントとなっていろんな意味を含めていると思うんですけど、これについて是非解説をお願いしたいと思います。
 

橋本委員

まさしくこれは御指摘のとおりでありまして、労働者協同組合は、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業を行われ、組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織ということが第三条第一項でございますが書いてありまして、その事業への組合員の意見の反映というのは、まさに組合の根幹を成す重要な要素でございます。  すなわち、労働者協同組合は、ほかの組合員とともに意見を出し合いながら働く場を組合員自身でつくるというものでございまして、このような組合の性格に鑑みまして、本法案では組合員それぞれが意見を出せる仕組みを設けることとしたものでございます。  その仕組みについてもう少し申し上げますと、まず、組合員の意見を反映させる方策を組合の定款の必要的記載事項としております。第二十九条第一項第十二号でございます。組合員それぞれの意見をどのように集めるのか、出てきた意見はどう集約していくのかといった点について、各団体の状況を踏まえて定めることを想定をしております。  そして、各事業年度に係る組合員の意見を反映させる方策の実施の状況及びその結果を総会への報告事項としております。これは第六十六条の第一項にございます。これによりまして、組合員それぞれが出した意見がどのように反映されたかについて全ての組合員が確実に共有することができるものと考えておりまして、これによりまして、先ほど申し上げましたその基本原理というものを果たしていきたいと、このように考えております。
 

石田委員

とても重要なところだと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  次に、組織について確認したいことが一点あります。  労働者協同組合、規模は様々になると思うんですけれども、比較的規模の小さな組合で組合員監査会を設けることができるというふうになっております。小さな規模の組合ですから、その組合員が組合員監査会をつくって監査するとなると、ある意味、自分自身が自分自身を、また自分たちが自分たちを監査するという形になってしまうのかなというふうに思わなくもないんですけれども、この辺、組合員監査会を認めた趣旨について御説明、お願いしたいと思います。
 

橋本委員

組合の適切な運営を確保するためには理事の職務執行を監査することは重要でございまして、この役割を果たす者として監事を置くこととしております。第三十二項の第一項でございます。そして、監査は、監査対象である理事からの独立性を確保するため、理事や組合の使用人との兼職ができないこととされております。第四十三条です。  一方で、特に小規模の組合におきましては、全員がその理事あるいは使用人として営業や日常事務などの組合の活動に従事したいと、こういうニーズがあるものと承知をしております。しかしながら、監事は理事や使用人との兼職が禁止されているため、監事になることでこれらの活動に従事することができなくなってしまう、そういう人が出てきてしまうということになります。  この問題をどのように解決すべきかにつきましては、この法案作成過程で大きな論点の一つでございました。議論する中で、当時、ワーキングチームの座長でおられました田村憲久、今の厚生労働大臣ですが、先生から、労働者協同組合の性格に鑑みれば、理事の活動をほかの組合員がチェックできるような規模の組合であれば、各組合員による監査という仕組みを設けることも一つの合理的な解ではないのかという御提案がありまして、この御質問の組合員監査会は、この考え方を基にこれまでにない新たな組織としての制度設計を行ったというものでございます。  すなわち、小規模の組合において、組合の活動への従事のニーズに応えつつ、理事の職務執行に対する監査が適切に行われるように、組合員の総数が二十人を超えない組織に限り監事を置かないことができることとし、これは第五十四条第一項でございますが、その場合には、理事以外の全ての組合員で組織する組合員監査会という新たな仕組みを設け理事の職務執行を監査をするということとしております。これによりまして、要するに全員で理事の仕事を監査するという格好をつくるということで、別の独立した監査という人を置かないということにしたということでございます。  なお、なれ合い的な監査となることを防止する観点から、組合員監査会による監査の結果である監査報告については一定期間事務所に備え置くことを義務付けておりまして、組合の債権者による閲覧等を可能とするということとしております。