第186回国会 法務委員会 第8号(平成26年4月1日(火曜日))

江崎委員長

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。初めに、橋本岳君。

橋本(岳)委員

 皆さん、おはようございます。自由民主党の橋本岳でございます。(発言する者あり)ありがとうございます。絶大なる御声援をいただきまして、光栄でございます。

 この法務委員会で一期生のときに一遍質疑をさせていただきまして、二回目の質疑ということになりますが、きょうは死因究明制度について質疑をさせていただきたいと思います。

 先日の当委員会におきまして、民主党の郡委員がいろいろ重要な指摘をたくさんされました。そのときに私の名前も党の方の座長ということでお出しをいただいたわけでございまして、これは私もせにゃおえんな、こういうことでちょっとその続きと申しますか、いろいろさせていただきたいと思っております。

 資料が配付されていると思いますけれども、私の方で作成をいたした資料でございます。いろいろなことが書いてありますので、質疑の合間に眺めていただければいろいろ発見もあるのではないかなと。また、私の質疑の中でもここをごらんくださいということで見ていただくこともあると思いますので、お目通しをいただければと思います。

 多分きょうはいろいろ質疑が、通告はもちろんさせていただいていますし、それにできるだけ沿うようにはいたしますが、時間の関係そのほかでいろいろな質問が出るかもしれません。適宜御対応いただければと思っておりますし、大臣には最後に一言御感想を求めたいと思っておりますので、どうぞ聞いておいていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 さて、では死因究明を何でしなければいけないのかなというところから話をしたいと思います。

 法務省の所管でございますが、戸籍法という法律がございます。ここの第八十六条に、死亡の届け出について規定がありますが、その2というところです。「届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。」こういうことになっておりまして、要するに死亡届を出す、そこに死亡診断書ないし死体検案書がついていて、そこにドクターがなぜ人が亡くなったのかというのを書く欄があります。

 それは戸籍法に規定をされているわけですけれども、戸籍法を所管する法務省として、なぜ診断書とか検案書を添付しなければならないというふうにしているんでしょうか、教えてください。

谷垣国務大臣

 今、橋本委員おっしゃったように、戸籍法はそのように定めているわけですが、これは人が亡くなった場合、戸籍に死亡した日、死亡した時間、それから死亡した地、場所ですね、地等の記載がされて、その死亡の事実が公証される、公に証明されるという仕組みになっているわけですが、そこで、そういった事項を証明する資料として、死亡診断書あるいは死体検案書の添付を求めて、戸籍の記載内容の真実性を確保しよう、こういう趣旨だろうと思います。

橋本(岳)委員

 ありがとうございます。

 だから、法務省は、逆に言うと、死亡診断書などで必要な記載項目というのは死亡日時と死亡した場所、地だけだという話でありまして、では何で、なぜ亡くなったかという死亡に至る経緯を書く欄があるのか、なぜそれを調べなければいけないのかという話になりますが、これは法務省の所管なんですか。

高島政府参考人

 お答えいたします。

 死亡診断書や死体検案書の作成につきましては、厚生労働省が所管しております。その中で、死亡に関する医学的、客観的な事実を正確に記入するように指導しているところでございます。

橋本(岳)委員

 ちょっと意地悪な質問をしました。大変失礼をいたしました。

 厚生労働省さんが要するに死体の亡くなり方、人の亡くなり方については所管をされているということで御答弁があったわけでありまして、まさに、正確に書かれるべきということで指導されているというふうに伺いました。そうなんですよね。

 ただ、では、正確に書かれるべきということ自体はごもっともだと思いますけれども、実態はどうなのかという話で、ちょっと参考資料の方を見ていただきたいと思います。

 三枚めくっていただきまして、右下に十二という数字がある、円グラフが四つ並んでいるところがございます。「解剖率の多寡により死因は変わる」という見出しがついておりまして、東京都の二十三区、監察医務院が機能している、監察医制度がある、解剖率二一%のところと、東京都のそれ以外、多摩・島嶼部、ここは解剖率は五・五%と明らかに違うわけですけれども、そこで、書かれる死因が違っているよねというグラフが出ております。これは東京都監察医務院の資料よりつくらせていただきました。

 いろいろ指摘がありまして、不慮の事故死が多摩・島嶼部の方がちょっと少ない、これはそういうものが見逃されて病死扱いになっているんじゃないですかという指摘があったり、病死の中でも循環器系疾患の割合が少し高い、要するに、ほかの死因かもしれないところをそういうふうな扱いをしてしまっているのではないかというようなこと。

 あと、私は、資料には指摘がなかったんですが、グラフを眺めていて不思議だったのが、解剖率が高い東京都二十三区内の方が、死因不詳という記載があるんですね、四・八%。解剖率が低い、要するに検案だけで、あるいはほぼ恐らくこれは記載されているであろう多摩・島嶼部の不詳というのが〇・五%で、少ないんですよね。多分、解剖をしてわからなかったということはあるんだと思います。その結果として不詳になった四・八%という方が実は正しいんだと思うんですね。逆に言うと、解剖率が低いところは違う死因がついているんじゃないかなという可能性が指摘をされるようなグラフなのではないかなと思っているわけであります。

 だから、そういう意味で、厚労省さんは、正確に記載されるべき、客観的に、こういうことも書いておられますが、実のところどうなんですかということが問われるわけであります。

 それから、もう一個グラフを見ていただきたいと思いますが、十二のグラフの右上、十三の「医療現場では費用持ち出しでAi施行」という横棒グラフが並んでいるところがございます。Aiというのは、死亡時画像診断ということで、亡くなった御遺体に対してCTだとかMRIで画像を撮って死因を調べようということですけれども。

 日本医師会の調査によると、結構な割合の施設、調査に回答した施設の中でですから、その割合に意味があるかというとあれですけれども、ただ、八百七十六の施設がやったことがある。そして、どのような場合にやりますかというと、一番多いのは「治療中の患者以外の救急搬送後」であります。

 要は、救急車で突然患者が来るわけです。いろいろな処置のかいなく亡くなってしまいました。そうすると、死亡診断書を病院は書かなきゃいけませんが、それまでの経緯がわからないんですね。とにかく救命処置を一生懸命しました、だけれども救えませんでした。そういう人が多い中で、しようがないので、現場では、CTでも撮って何かわからないかなということで、実際にやったことがある。だから、誰が費用負担をしたか、「施設持ち出し」が一番多いわけです。

 そんな現状がある中で、費用負担というのは基本的に国はしていないんですよね、正確であるべきと言いながら。実際のところ、医療現場とかがしようがないから自分たちの持ち出しでやるんですよ、こういうことを。亡くなった人に関することですから、皆さん、真面目にされます。立派なことだと思います。政府はそれにあぐらをかいていませんか。そのように感じるわけであります。

 話を次の話にしますね。

 これは郡委員のところで、解剖率二〇%を目標という話がございました。警察庁の参考人の方から御答弁があったわけでありまして、監察医制度とかがあるところの数字を参考にしているんだから、そういうところもあるかもしれないし、今度、推進法もできるので、そこでの検討でできた組織も頑張るんじゃないかというような話で、警察は必要な解剖をするということで解剖率の向上に努める、こんな趣旨の答弁だったと思います。

 何というか、ドラえもんののび太君の答弁かと思いました。目標を立てます、やりますと言っておいて、では、二〇%、何でできていないんですか、ドラえもんがやると思っています、そんな話かなというふうに私は聞いて、少し腹を立てたところであります。

 さて、では、厚生労働省、監察医制度で二〇%を達成するように、日本平均で一一%ぐらいですから、残り九%ぐらい、監察医制度でやるということになっているんですか。

高島政府参考人

 お答えします。

 現在、監察医制度は設けられておりますが、これは全国でやっているわけではございませんで、今、東京都とか横浜市とか、そういうところで、人口集中地域で行われているところでございます。

 その中で、解剖率につきましては、国として特段の目標は設定しておりません。基本的にはこの事務は都道府県の事務でございますので、都道府県の財政の範囲内でやっていただいている、こういうふうに考えております。

橋本(岳)委員

 今、あっさりと、国として目標設定していないという話をされました。しかし、資料の一番最後のところ、「解剖率目標はいつ誰が達成するのか」というところの四角で、この解剖率二〇%というのは、そのときぱっと出てきた話じゃないんです。

 一番上は、衆議院法務委員会、この委員会で、下村委員長のときに提言書を出しました。そこにも、法医解剖数で倍増という表現をしてあります。当時一〇%ぐらいだったので、大体二〇%ぐらいということ。そういうところから二〇%というような数字は出ているし、そして、死因・身元調査法の審議のときに、これは郡委員が御指摘になりましたけれども、警察庁の舟本参考人が、二〇%、この数年で何とか向上することが目標と言っているんですよ。おかしくないですか。いつの間に旗をおろしたんですか。

 では、いいです。

 今、推進法に基づいて検討会をされています。では、検討会では、この二〇%を達成する、そういうふうに書いてあるんでしょうね。

安森政府参考人

 お答えいたします。

 死因究明等推進計画検討会においても、死因究明の手法の一つとして実施される解剖の重要性については十分認識しております。必要な解剖が適切に実施できる体制づくりに向け、現在、種々検討が進んでいるところであります。

 この具体的内容につきましては、現在、まさに検討会において検討されている途中でございますので、現時点で事務局から明確に回答できることには至っていないところでございます。

橋本(岳)委員

 状況としてはそうなんだろうと思いますから、議論中、そうですね、では、書いてあることを僕は期待したいですね。

 まさか政府が、法律をつくるときに、目標が困難ですと言ったんですよ。それで、さっきの高島参考人の答弁は、私は納得できない。警察が勝手に言ったんだ、厚労省は知らない、そんな話は通じませんよ。通じませんよ。

 あるいは、さっき、のび太君という言い方をしましたが、警察庁の司法解剖だけでも、これは十ページに「解剖率の地域間格差は大きい」というグラフが出ていますけれども、これは監察医制度も入っているグラフです。例えば、沖縄県二四%とか秋田県一四・二%とかは、司法解剖だけでこれだけの割合をほぼやっているものと思われます、監察医制度がないから、まあ承諾解剖があるかもしれませんけれども。片や、広島県二%、岐阜県二・六%。

 必要なものを必要なだけ解剖していますと言って、何でこんなに地域差があるんですか。本当に必要なことをやっているんですか。それとも、秋田県とか解剖率が高いところは、やたら殺人事件が多いとか、何か特殊事情でもあるんですか。やっていないんですよと言わざるを得ないですよね。

 だから、私は、郡委員の質疑というのは大変いいところを切り取っていただいた質疑だと思っていますし、その答弁、本当に腹を立てておりました。聞いていなかったですけれども、当時、後で議事録を拝見して、こんなおかしな答弁しているんだと思いました。

 そもそも、この死因・身元調査法ができたとき、警察庁が検討会をつくって、それをもとにできたと思っておりますが、検討会では、警察庁は、四十三件、犯罪死の見逃しがあったということを踏まえて、これをどうにかしたいということで新しい法律をつくろう、つくるべきだという提言があって、そういう運びになったわけですよね。それで、一つの目標として、要するに、必要なこともできていないかもしれないから、できるような体制をつくろう、だから二〇%を目指したい、そういう理由であったはずなんですよ。それをおろすなんて、どうしているんでしょうかという話でございます。

 これは、検討会が今内閣府の方でされているということで、鋭意取りまとめをされるんでしょうし、それをもとに閣議決定をされるということですから、きちんと、政府として、全体としてこういうものを目指すんだ、解剖率二〇%というのは、例えば何か合理的な理由があって変えるべきだというんだったら、それは議論して合理的に変えていただければいい。だけれども、そこで言われたその気持ちというのは守っていただかないと、必要なことをやっています、のび太君は何で成績が悪いんですか、僕は僕なりに自分で勉強しているんですと言っているのと同じですよ。ぜひ、そこはしっかりと御検討いただきたいと思います。

 さて、監察医制度の話が出ました。

 これは、制度としておかしな制度だと僕は思うんですよね、いろいろな経緯があるんだと思いますけれども。東京二十三区以外は、横浜市、大阪市、名古屋市、神戸市、全部、政令指定都市。なのに、実施主体は東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、兵庫県ということで、実施エリアと実施主体がずれているんですよね。普通、政令市の中の事務は政令市でやるものだと、私も衆議院総務委員会というところにおりまして、そういう自治系の議論なんかもするわけですが、そういうふうに思うんですけれども、そういうことがあると、大阪都構想というのも合理的な構想だなと、この制度について言えば市と府がこんがらがったことをやっているので、僕は思ったりするところもあるんですけれども、厚労省、何でこんな制度になっているんですか。

高島政府参考人

 監察医制度でございますが、都道府県知事が、特定の地域内における伝染病、中毒、または災害により死亡した疑いのある死体について、その死因を明らかにするために監察医を置きまして、検案をしても死因が判明しない場合には、これは遺族の承諾がなくても解剖できるという制度でございます。これは、昭和二十四年に制定されております。

 監察医が検案、解剖する対象地域が都道府県内の一部の地域に限定されている理由でございますが、これは、当時の伝染病予防法、今では感染症予防法になっておりますが、これによります感染症の予防対策、こういったものにつきましては都道府県知事が行うというふうになっております。

 監察医の解剖でございますが、解剖の実施に当たりましては、本来であれば、解剖というものは遺族の承諾が要るのでございますが、監察医というものは、承諾なく解剖できるという非常に強権的な色彩の強いものでございます。こういった観点から、さまざまな問題、これは死体の尊厳の維持とか、そういった面から問題が生ずるのではないかということで、伝染病とか中毒の影響が著しくあらわれる、特に戦争直後の非常に混乱した時代につくられたわけですが、こういったときに、そういった可能性が強くあらわれる可能性がある人口の密集地域、こういうことで限定したものでございます。

橋本(岳)委員

 経緯というのはそうなんだろうと思いますが、いまいち、では何で政令市に移管しないんですかみたいなことはよくわからないなという感想もするわけであります。

 きょうは、総務省自治行政局長にお越しをいただいております。

 そういう地域、政令指定都市内でやる事業について都道府県が所管する、そんな事業というのは余りないと思うんですけれども、その辺の所感を教えていただけますか。

門山政府参考人

 お答えいたします。

 ただいまお尋ねにありました監察医制度のような形で、府県の中の特定の政令指定都市の地域のみを対象にいたしまして府県の知事が事務を行うという形は、恐らく歴史的な沿革によるものだろうというふうに考えております。

 総務省として、完全に全ての制度について類似がないかというところを確実には申し上げられませんけれども、探しましたところで類似の仕組みというのは見当たらなかったということでございます。

橋本(岳)委員

 類似のものは見当たらなかったということですから、余り例がないということは言えるんだろうと思うわけですね。

 よく言うじゃないですか、県庁所在地の政令市と県で余り仲がよくないとか、そこは、いろいろな事例はあるんだと思いますし、協力しながらやっているんだと当然思いますが、少なくとも、所管がねじれていることで、どのぐらい力が入るかというのは変わってくるようなこともあるんじゃないかと思うんですよね。

 これはちょっと何年の資料だか書いていないんですけれども、昔の厚生労働省さんの「監察医制度の現状について」という資料ですが、例えば愛知県名古屋市、平成二十三年中で、検案数六体、解剖数六体ということになっていますね。名古屋市は人口密集地域、それは間違いないです。それで、六体の解剖をしましたということで、一体どのぐらいの意味があるんだろうという話があったりということもあるわけですよね。

 このあたりの監察医制度の、しかも人口密集地域だけでやるんだったら、ある意味サンプル調査みたいな意味もあるんだとは思いますが、先ほどの話とあわせて、やはり解剖率をどうするのか考えるべきだと思いますが、検討会の報告ではどのように扱うつもりですか。

安森政府参考人

 お答えいたします。

 現在、検討会において、御指摘のねじれ状況という議論はまだ出ておりません。ただ、地域的限定があるのがどうかという議論が出ているところでございます。

 そして、現在の方向は、今後適切に解剖等が行われる体制づくりを求めていく中で、厚労省としましても監察医制度のあり方というのを改めて検討していくという方向で今議論が進んでいる途中でございます。

 以上でございます。

橋本(岳)委員

 先ほどの目標の話とあわせて、ぜひきちんと目標を持って、それをどうするのかという方向で御検討いただきたいと思います。

 次の話に行きます。

 これも郡委員の質疑で出てまいりました、警察庁が法医学会に対して司法解剖実施経費の値下げの提案をされているという御指摘がありました。

 では、法医学教室の状況はどんなものかということで、また資料の方を見ていただければ、先ほどの、解剖率の多寡により云々というものの上、十一ページのところですね。グラフはないんです、文字ですけれども、警察庁の報告書によると、司法解剖、行政解剖に従事する医師の数、百七十人ということになっています。当然ながら大都市に多いわけで、地方に行くと、岡山県一人とか広島県何人とか、そういう世界であります。

 法医学会から提言が出ていまして、「献身的努力によってどうにか維持されているのが現状である。」とか、「現状のまま推移し、」「政府の積極的な施策がない場合には、近い将来、各法医学教室において現在行われている法医解剖でさえ、十分に実施できない状態に陥る可能性がある。」こういう悲鳴に近い提言まで出ているという現状があるわけですね。

 その中で、警察庁さんから各種検査の今の単価というものをいただきました。資料御提供、ありがとうございます、本当は解剖もいただきたかったんですけれども。

 それで、現状に合わせて、数もふえているので、減価償却だとかそういうことも見直しをするということで予算の効率的実施を図るんだ、こんな話もある、やっているということで話をいただいております。ちょっと、ここはもう質疑を割愛します、時間がなくなってきましたので。

 それで、文科省さんに聞きたいんです。法医学教室がちゃんとやるかどうか、うまく回っていくかどうかということは、やはり大学を所管されている文科省さんの責任だと思うんですが、こういう話をされているということについて関心を持つべきではないですか。知っておられましたか、私が通告するまで。

吉田政府参考人

 大学の法医学教室におきまして、警察からの委託に基づきまして司法解剖を行っている事例、これは年々増加傾向にございます。平成二十年度におきましては六千七百三十六件でございましたけれども、平成二十四年度におきましては九千二十四件という形でございます。それに伴いまして、法医学教室の教員の負担が大幅に増大をしているというところでございます。

 私どもとしては、大学の本来業務である教育研究等に支障が生じないように、業務負担に見合った十分な委託経費が措置されるべきだというふうに考えておりまして、司法解剖経費の見直しに関する検討状況については大いに関心を持っているところでございます。

 この話につきましては、前から、警察庁の方からは、この経費の見直しについては私どもも情報をいただいております。

橋本(岳)委員

 ありがとうございます。前から情報をいただいておられた、知っておられたということで、引き続き関心を持って、予算の効率的な執行というのは大事な観点で、もちろん、やたら多額の委託費を払っていることがいいかというと、そんなことはないわけであります。

 だけれども、法医学教室というのは、もちろん、まず教育機関としての意味もありますが、ほぼこういう解剖制度によって運営が支えられているという面もあるわけでありまして、ほかのゼネコン業者みたいに、官公庁受注の単価が下がったから民間で頑張りますとか、そういうわけにいかないわけですよね。だから、そういう意味で、きちんとした維持ができるようにという水準で、その検査の単価あるいは解剖の単価、そうしたものを設定されるように要望を申し上げたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 さて、もう一点、時間がだんだんなくなってきましたが、これも郡委員の質疑で亀岡大臣政務官が答弁をされましたが、地方の体制について、しっかり国が責任を持って実施できる体制をつくるという趣旨のお話をされました。

 地方自治体なり地方のいろいろな機関に何かをさせるというときに、やってくださいというお願いをするだけで物が動くかというと、動かないと思いますよ。きちんと法律に基づくなり、あるいは補助金を出すなりするというようなことが要ると思いますが、そうしたことについて御検討されているんでしょうか。

安森政府参考人

 お答えいたします。

 死因究明等を進めていく上に当たっては、政府の取り組みとともに、地方における取り組みが重要であり、かつ、その連携が大切なんだろうと考えております。推進法では、死因究明とは、死体について、検案、検視、解剖その他の方法によりその死亡の原因などを明らかにすること、そして、死因究明の実施に係る体制の充実強化が喫緊の課題とされたところでございます。

 検討会におきましては、政府からいわゆる地方における取り組みの支援、すなわち検案、検視、解剖など、それぞれの機能、体制に対する各省庁からの支援策というものを今検討しておる最中でございます。先ほど申し述べましたが、その具体的な内容がまだまとまっておりませんので、確定的に申し上げることができないのが現状でございます。

橋本(岳)委員

 では、まだ検討中ということですから、しっかり検討していただかないといけないと思っておりますし、さっきの解剖目標という話がありました。これはこだわりますけれども、もちろん解剖するのが全てだと思っていません。しかしながら、何の検査もしないで、検査の手段がなかった戦前とか戦後とかの、それこそ死体解剖保存法ができたころの話であれば、検案をして解剖するのは、もうサンプル的にしかしようがないよねということはあり得たと僕は思います。

 しかしながら、今、さっき言いましたAiというような、画像で遺体に傷をつけないで物を調べるとか、あるいはいろいろな薬毒物の検査だとか、そんなこともできる、警察の現場とかでもされていると思いますけれども。警察が必要だと思ったのをやるというところじゃなくて、検査をしてから、これは司法プロセスなのかそうじゃないプロセスなのかというのを本来は調べるべきなんだろうと私は思っていて、そういうものを目指すために、解剖率、本当は五〇%にしたいけれども二〇%という話が出ているのが、二〇%の経緯なんです。その思いはぜひ酌んでいただかなければ、いつの間にか目標がうやむやになって消えていて、必要なことをできるようにと言っているだけでは物事は前に進まないんですよね。

 資料の中で、一番後ろの、解剖率目標の上ですね、私の顔の吹き出しが出たあれがありますけれども、これは前回の法務委員会の質疑の中での話です。

 要するに、今私が言ったような話は全部ここでやっているんですよ、平成二十一年四月衆議院法務委員会。法医学教室の充実をどうするんですか、見逃し防止をどうするんですか、Aiをどうするんですか。全部どの省庁も、総合的に検討すべき課題だと言っている。平成二十一年にですよ、何年前ですか。

 それで、検討会ができた。立派な検討ができているんですよねと思っていたら、それこそ、解剖率目標、政府としては持っておりませんという断言をするような答弁まで出た。検討中ですから、これからきっと出るんだろうと私は信じておりますが、まさか答弁を覆すようなことなんかないよねと私は思っておりますけれども。

 まずこういう目標を立てて、それで、それをどう実現するかというときに、各省庁、では、どう分担をしようか、それをどう実現していこうか、予算をどうとろうかという話があって、連絡調整、連携というのが出てくるのであって、初めから各省庁でやらないといけません、連携をします、連携をします。誰もそれでセンターをとらない、目標に責任を持たない。そんな体制で今まで来ている。

 もし仮に、推進法は九月で切れますよ。検討会の役目は、それまでに閣議決定をつくって終わりですよ。だけれども、その後にできるものが、関係する閣僚が連絡調整をする、連携をする、それだけの会議だったら、つくる意味ないですよ。これまでと変わらないもの。違うでしょう。大きな目標があって、それをどう実現するかに調整が要るんですよね。そのような体制になっていないとおかしいと思いますよ。

 地方についても同じです。施策の検討をする期間じゃない、もう予算をとってやるという時期に差しかかっていると私は思います。

 ぜひそうした思いを酌んで、時間が参りましたので、ちょっと幾つか質問を割愛させていただきます、申しわけありませんが、最後に谷垣大臣の御所見、大臣も推進会議のメンバーですので、ぜひ感想を一言お伺いして、質問を終わります。

谷垣国務大臣

 今の委員の御議論を伺いまして、このおつくりになった資料の、委員のお顔が吹き出しになっているのを拝見しますと、橋本さんのいら立ちが伝わってくるような御質疑だったと思います。

 やや求めておられる感想と違うかもしれませんが、私も今まで議員立法を何件かやってまいりまして、この役所だけの議員立法だったら割とスムーズにいくんですけれども、幾つかに関連するときはなかなか進まない。誰が中心になってやってくれるんだという実施になると、議員立法はできても、それを実際に活用していくとなると、行政が動かなければできないけれども、議員立法はしばしばそういうところで消化不良を起こしている例が多いというのを私も今まで体験してまいりました。

 恐らく、あなたのお父上、橋本龍太郎総理が内閣府や内閣官房をおつくりになろうというのも、橋本総理もたくさん議員立法をおやりになりましたから、そういういら立ちがあって、今の政府の体制ではなかなか難しい、そこで内閣府という発想になったんだろうと私は想像いたします。それで、今は内閣府で検討会を持ってやっているということになっているわけですね。

 私は、今まで議員立法のそういう問題点を見ますと、内閣府も今は肥大化で、むしろスクラップ・アンド・ビルドが必要だというような議論になっていて、先の展望はなかなかしにくいところもございます。だけれども、一つは、やはり議員立法は、こうやって国会で尻をたたいて、ねじを巻いていただかないと、なかなか進んでいかないという現実があると思いますし、そこでねじを巻くのもまた国会のお役割だろうというのを、今つくづく改めて感じた次第でございます。

 それからもう一つ、この間の郡委員の御質問、あるいは今の橋本委員の御質問で、私もちょっともう一回勉強をしてみたんです。

 私も、この議論が始まりましたときに、国家公安委員長をやめて間もないころでございましたから、今の長官が私のところに見えまして、こういうのをぜひ進めたいというお話があって、あのときは、やはりそういう熱意が非常におありだったというふうに思います。

 そして、私も議連の顧問をやらせていただいたわけですが、こうやって振り返ってみますと、困難はたくさんございます。まず、人も養成しなきゃいけない。人も圧倒的に足らないわけですね。それから、それを養成するにはやはり期間も必要だろう。それから、実際に実施していくためのいろいろな組織も必要だろうということになると、今お話しのように予算だということになりますと、まだまだ課題は物すごくあるんだと私は思います。

 結局のところ、今の政府の組織ですと、内閣府が中心になって牽引していかなきゃどうしようもないわけですが、今おっしゃるように、期限も切れる、そういうことでありますから、国会にも十分監視していただいてさらにこれを進めていかないと、なかなか進まないだろうと私は思います。

 私も内閣の中におりまして少しでもそういう努力をしたいと思っておりますが、今後とも、橋本委員初め、ねじを巻いていただきたい、このように思っております。

橋本(岳)委員

 ありがとうございました。引き続き、機会をいただいたら取り上げてまいりたいと思います。

 以上です。終わります。